21–23 Dec 2023
Asia/Tokyo timezone

低速中性子を用いた基礎物理実験の現状と展望

23 Dec 2023, 13:40
40m

Speaker

川崎 真介 (KEK)

Description

中性子は電荷を持たず約15分という長寿命を持つため、電気相互作用の影響を受けずに精密に相互作用の検証を行うことができるプローブである。特に波動性が顕著に表れ光学的に制御することが可能な低速中性子は、次に述べるような種々の基礎物理実験に用いられている。中性子EDMの存在は時間反転対称性を破り、CPT保存を仮定すればこれはCP対称性の破れと同義である。標準理論における計算値は現在の観測精度に比べ桁違いに小さいため、クリーンな環境で新物理の検証が行える。中性子が原子核に吸収された際の複合核反応において離散的対称性が増幅する場合があり、これを用いた時間反転対称性の検証実験も行われている。中性子ベータ崩壊寿命はビックバン元素合成や小林-益川理論におけるユニタリー性の検証にとって重要な物理量である。重力場中の中性子の波動的振る舞いから既知の相互作用からのずれを観測することによって未知短距離力を検証することもできる。
これらの低速中性子を用いて観測できる物理量やその測定手法についての現状についてのレビューを行い、観測技術の向上や将来の展望について議論する。

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