本講義では光源加速器で採用される代表的な磁石配列 (ラティス)と、
電子ビームの軌道を記述する光学系 (optics)の基本的な部分 (線形optics)について説明する。
また、KEKの放射光加速器であるPF-ringとPF-ARの改造・更新履歴、
さらにPF将来計画であるPF-HLSを例として、
実際の設計と運転への適用について紹介する予定である。
色収差を補正するため利用される六極磁場は、同時に非線形共鳴や振幅依存チュ
ーンシフトなどを誘起して、空間をビームの存在できる領域と存在できない領域
とにわける。放射光リングにおいてビームの存在できる領域が狭いと、入射効率
やビーム寿命が悪化し、結果としてトップアップ運転が困難となる。ビームの存
在できる領域を広げるためには、六極磁場係数を調整して色収差、非線形共鳴、
振幅依存チューンシフトなどを同時に補正する必要がある。この補正手法につい
て紹介する予定。
光を含めあらゆるものは波動と粒子の二重性を帯びているとされている。この日常的な感覚では理解しがたい量子論的概念も、今日では、情報技術などに応用されるまでに至っている。それでは、このスクールの主題である放射光もこの二重性を示すのだろうか。放射光源用電子シンクロトロンの動作原理は古典力学・電磁気学でほぼ完全に理解できる。放射光の量子性はどのような場面で現れてくるのだろうか。実験結果も交えながら楽しく話題提供する。
放射光源加速器では、ほぼ光速で直進する電子ビームの進行方向を変えることで放射光を生成する。進行中の電子ビームは残留気体ガスに衝突すると、散乱して失うことになる。残留ガスによるビーム損失を減らし、より長いビーム寿命を実現するためには、加速器全体を超高真空に保つ必要がある。本講義では、真空の基礎、放射光源加速器の真空システムの特徴、設計について、初学者を対象に説明する。
放射光利用研究施設では、広範な研究の推進に必要とされる様々な光を光源加速器を利用して生成して、ビームラインを通じて研究者が使う実験装置に送っている。光源加速器では、高エネルギー電子ビームを用いて放射光と呼ばれる、指向性が高く平均出力の高い安定した光を生成している。光源加速器を構成する要素の中で、磁場の力で電子ビームを蛇行させることで放射光を作る装置が挿入光源で、様々な特性を持った光を作るために多種多様な装置が運用されている。本講義では、挿入光源について初学者を対象に概説する。