17–19 Mar 2026
Asia/Tokyo timezone

X線天文衛星XRISMと実験室宇宙物理学

18 Mar 2026, 14:10
1h

Speaker

弘悦 山口 (JAXA)

Description

宇宙に存在する物質の大部分は、X線を放射する温度帯(数100万度〜数億度)のプラズマとして存在する。したがって天体プラズマのX線観測は、宇宙の力学的・化学的進化を理解するうえで不可欠である。

JAXAが運用するX線分光撮像衛星XRISMは、このような宇宙の高温プラズマを観測するために開発されたミッションである。主力観測装置であるX線マイクロカロリメータResolveは、50 mKの極低温で稼働する非分散型の分光装置であり、4.5 eV @ 6 keV (FWHM)のエネルギー分解能を軌道上で達成した。この値は従来のX線天文衛星の約40倍の分光性能に相当し、様々な高エネルギー天体に対する精密プラズマ診断を可能にした。XRISMはこの性能を活かし、これまでにX線連星、超新星残骸、活動銀河核、銀河団などの高エネルギー天体から多くの新知見を得ている。本講演の前半では、XRISMによる最新の科学成果を紹介する。

天体プラズマは、強重力場や強磁場、強い放射場、さらには極端な高密度・低密度といった、地上では再現が難しい極限環境下の物理を探る貴重な「実験場」を提供する。一方で、観測されるX線スペクトルは、異なる状態のプラズマ成分が重なり合った複雑な構造を示すことが多く、その物理的解釈は容易ではない。この課題を克服し、天文学的観測から得られる物理的知見の信頼性を高めるためには、実験室プラズマを用いた検証実験が重要となる。

私たちはこの観点から、電子ビームイオントラップ(EBIT)を用いた高分解能分光実験を行っている。EBITでは、強磁場中で集束した電子ビームにより高電離イオンを生成し、原子遷移に伴う特性X線を測定する。さらに、放射光施設と組み合わせた独自の実験系により、多様な高電離イオンについて遷移エネルギーや振動子強度を高精度で決定することが可能となる。本講演の後半では、私たちが取り組むEBIT実験について紹介するとともに、天体物理学と実験物理学との今後の連携の展望について議論する。

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