ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊事象の探索を目的とする AXEL 実験では、高圧キセノンガスTPCを用いている。キセノンをはじめとする希ガスのシンチレーション光の波長帯は真空紫外域にある。VUV光の直接検出には特殊な光検出器を要することや検出効率、バックグラウンド等のさまざまな問題があり、それらの解決を目指したシンチレーション光検出方法の開発研究を行っている。現在開発中のセットアップは波長変換材や反射材、MPPCといった容易に入手可能な物によって構成されており、試作段階にある。本講演では、シミュレーションによる検出効率の検証と、波長変換材塗布実験の途中経過、および高圧キセノンガス検出器への実装を見据えた展望を報告する。
理研では宇宙用として、レーザーにより穴加工した GEM を、さまざまな科学衛星に搭載してきた。2021年12月に打ち上げられたNASAのX線偏光観測衛星 IXPE と、理研が2023年11月に打ち上げる超小型X線衛星 NinjaSat について、プロジェクトを紹介するとともに、GEM の開発や運用について説明する。
2023 年 11 月に打ち上げ予定の超小型X線衛星 NinjaSat に搭載する非撮像型 GEM X線検出器 (Gas Multiplier Counter; GMC) は XeArDME 混合ガスが封入され、2~50 keV に感度を持つ。GEM は温度変化によりわずかに歪みが生じるため、インダクション領域における電場の大きさが変動し、電荷の収集効率に温度依存性が伴う。 我々は打ち上げ前の地上較正試験で、運用温度を含む −10~+27 ℃ の範囲で電子増幅度を実測した。半径 33.5 mm の GEM に対して、約 2 mm 間隔に測定した 1015 点のX線照射データから電子増幅度分布を調査した結果、5 ℃の温度変化で電子増幅度が最大 1.1 倍になることが明らかとなった。本講演では、GEM...
方向感度をもつ暗黒物質の直接探索実験であるNEWAGEは、ガスTPCを用いた反跳原子核の3次元飛跡再構成技術を用いて探索を進めてきた。更なる感度向上のため、読み出し検出器表面からのα線や素材由来のラドン放出量の低減を目的とした低バックグラウンドマイクロパターンガス検出器を開発した。本講演ではこの検出器の性能評価結果並びに地下実験での運用への準備状況について報告する。
Beta-ray imaging is now widely employed for autoradiography of living plants. Developing a cost-effective real-time imaging system for such applications remains challenging, given the requirements of low-energy detection, large sensitive areas, immunity to ambient light, and energy-resolving capabilities. Gas Electron Multiplier detectors (GEMs) show great promise in meeting these needs. In...
方向感度を持つ暗黒物質の直接探索実験であるNEWAGEでは、モジュール搭載型の大型ガスTPC開発を行っている。このTPCのためのモジュール型検出器を開発し、試験用の小型チェンバーを用いてこの検出器の動作実験ならびに性能評価を行った。本公演では、この結果について報告する。
地下における希事象探索実験では、不純物の極めて少ない素材を用いた大型検出器が必要である。素材の極低放射能測定のために、low-alpha μ-PICを用いたTime Projection Chamberに基づいたアルファ線イメージ分析装置(AICHAM)を開発している。実験グループの枠を超えて、サンプル分析を実施し、並行して感度改善の研究を実施してきた。特に、CF4ガス発光(s1, s2)の時間差を使うことで、セルフトリガー式TPCでありながら、ドリフト位置を決定し、結果として雑音事象を抑制するアイデアを検証してきた。本講演では、最近のAICHAMの進捗について報告する。
The µPIC-based Neutron Imaging Detector (µNID) is one of the main imaging detectors in use at the energy-resolved neutron imaging instrument RADEN at the J-PARC Materials and Life Science Experiment Facility (MLF). The µNID takes advantage of the pulsed neutron beam of the MLF for accurate determination of neutron energy via time-of-flight to measure the energy-dependent neutron transmission...
GRAMS (Gamma-Ray and AntiMatter Survey) is a proposed balloon/satellite mission that will be the first to target both MeV gamma-ray observations and antimatter-based indirect dark matter searches with a LArTPC (Liquid Argon Time Projection Chamber) detector. As a milestone for GRAMS, we have conducted an engineering balloon experiment at JAXA’s Taiki aerospace research field. Furthermore, we...
GRAMS実験では液体アルゴンTPC(LArTPC)を用いた宇宙反物質の検出を目指している.そのため標的となる反粒子検出手法の確立が必要であり,J-PARCハドロンホールK1.8BRでの反粒子同定実験を予定している.それに向けて現状使用しているTPCのAnodeの再設計を行なっている.本講演では今まで使用してきたTPCと現在開発しているTPC Anodeについて概要と現状,今後の方針について報告する.
GRAMS実験は液体アルゴンTPCを搭載した気球実験であり,宇宙線反粒子探索による暗黒物質間接探索を目標の一つとする。液体アルゴンTPCの反粒子識別原理検証のためJ-PARCハドロンホールにおいて反粒子ビームを用いたT98実験Phase2を計画している。本発表では,LArTPC用として開発されたASIC LTARSを搭載した信号読み出し基板であるTIGArBoardの概要とその特性評価について報告する。
NEWAGEをはじめとした方向感度を持つ暗黒物質(WIMP)探索実験は、ガスTPCを用いてはくちょう座方向に対する原子核反跳の角度を測定することで、ニュートリノフロアと呼ばれる太陽ニュートリノBGによる感度制限を超えた低質量暗黒物質探索を行うことを目指している。一方、低質量暗黒物質由来の信号においては反跳原子核の飛跡が短く、検出器の読み出し粒度より短い飛跡の再構成ができない問題があった。この問題を打開すべく、微細ピッチのピクセル読み出し型ガスTPCの開発を進めている。本講演では、その進捗状況を報告する。
大強度重イオンビームを用いた非弾性散乱や核子移行反応の測定を行うため、ガスアクティブ標的 CAT-M の開発を進めてきた。重イオン照射の際のデルタ線に対する対策が課題であったが、永久磁石を用いた双極磁石の導入によって排除を試みた。本講演では最近の進展について報告する。
原子核反跳に伴い、ミグダル効果と呼ばれる追加の励起や電離を起こす現象が低確率で生じうると考えられている。このミグダル効果観測が暗黒物質探索に応用されれば、エネルギー閾値が下がり感度が向上する。MIRACLUEは中性子ビームを用いてミグダル効果観測を目指しており、昨年4月にAISTでガスXe検出器を用いたビーム試験を行った。本講演では、使用したXe検出器や、ビーム試験の測定結果について報告を行う。
液体アルゴンTPCは、半導体検出器と比較して大きな体積を実現しやすく、ガスTPCと比較して高密度であることから、宇宙ガンマ線を高い効率で検出する事が可能となる。液体アルゴンTPCにおいて、ガンマ線の到来方向決定精度向上のためには、低雑音の2次元読み出しが鍵となる。 AstroPixは、数百ミクロン角(200~500ミクロン)のピクセル型検出器であり、ガンマ線のコンプトン散乱による反跳電子や、対生成による電子・陽電子の飛跡再構成に適度なピクセルサイズと、エネルギー分解能を有する。 本講演では、液体アルゴンTPC宇宙ガンマ線観測観測装置の概要を紹介し、AstroPixの開発状況、性能について報告する。
MEG II実験はスイスにあるポール・シェラー研究所で行われているµ→eγ崩壊探索実験である。 MEG II実験では背景事象となるミューオンの輻射崩壊から来る背景ガンマ線を積極的に同定するための検出器をビーム軸上、上流側と下流側の二箇所に導入する。 上流側の検出器は大強度かつ低運動量のミューオンビームが通過するため、厳しい開発要請が課せられている。 我々は現在、要請を満たすことのできる検出器としてDiamond-Like Carbonを高抵抗電極に用いたResistive Plate Chamber (DLC-RPC)を開発している。 2023年8月-9月にKEK Platform-CのX線発生器を使用した本検出器の劣化試験を実施した。本講演では、その試験の詳細および結果について報告する。
2009年以降、これまで15年にわたってMPGD開発の国際的コラボレーションとして RD51 が機能してきましたが、2023年末をもって発展的解消となり、2024年より MPGD, RPC, ワイヤーチェンバー、ストローチェンバーなどガス検出器のコミュニティをまとめて、DRD1 が発足することになりました。 これまでの RD51 の総括と、DRD1 についての紹介を中心に、MPGD開発の海外動向についてお話ししたいと思います。