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「ビーム力学」というと、何か粒子加速器という特殊な装置に固有の、限定的な学問と思われるかもしれない。しかし、実際にそこで展開される議論は、特に相対論的単粒子力学という意味では、極めて一般的な理論である。逆に特殊相対論や相対論的古典力学は粒子加速器においてこそ、最も厳密に実証されてきたと言っていいだろう。
古典力学を実証した例として、天体力学がまず挙げられる。しかし、そこでの運動では特殊相対論的効果は通常、粒子加速器ほどの超相対論的効果は弱い(もちろん宇宙論のように一般相対論が必須の領域も存在する)。地球はその誕生以来50億回太陽を周回したとされるが、円形加速器でのビームの周回数はそれを大きく上回ることができる。そのような膨大な周回数にわたってビームを安定に保持することがなぜ可能なのか、その答えがビーム力学、あるいは相対論的古典力学にある。
古典力学といえば、与えられた電磁場の中での粒子の運動方程式は比較的簡単に書き下すことが出来る。あとはその微分方程式を「解くだけ」のトリビアルな作業に思われるかもしれない。その解は初期条件さえ与えられれば「解く」事ができる-しかし、実際にはこの「解く」という過程には、実に不可思議な罠が潜んでいる。例えば小惑星帯にいるある小惑星が、いつ軌道を外れて落ちてくるかを予測する事が不可能なのは、小惑星群の個々の初期条件で決めることができないからだけではない。仮に初期条件が与えられたとしても、それが有限桁の数値で表される限り、小惑星がいつ、どのように軌道を外れるかの予言可能期間はその桁数に比例する程度であることが知られている。この事情は粒子加速器でも同様で、加速器を周回する粒子がいつ失われるかを正確に予言することは不可能である。この講義では古典力学の一例としての「ビーム力学」を通じてこのような古典力学に潜む奥深さに迫ることを目指す。