- Inelastic/Quasielastic Neutron Scattering
- Diffraction
- SANS/Reflectometry
- Imaging
- Neutron-Nuclear Reaction
- Muon
実習にあたっての注意事項
実習を行うために各所属機関で放射線業務従事者として登録されている必要があります。なお、この放射線従事者登録のための教育訓練実施日、および、特殊健康診断日は次の期日を満たしている必要があります。
MLFの実習の場合
研究者・・教育訓練:2025/10/28以降、特殊健康診断:2026/4/28(国外機関所属の場合は2025/10/28)以降
学生・・教育訓練:2025/10/28以降、特殊健康診断:2025/10/28以降
JRR-3の実習の場合
研究者・・教育訓練:2025/11/12以降、特殊健康診断*:2026/5/12(国外機関所属の場合は2025/11/12)以降
学生・・教育訓練:2025/11/12以降、特殊健康診断:2025/11/12以降
* この条件で問題となる方は、申請の前にあらかじめ中性子・ミュオンスクール事務局にご連絡いただきますようお願いいたします。
放射線業務従事者登録のその他の詳細については後日、案内いたします。
Inelastic/Quasielastic Neutron Scattering
HRC (BL12, MLF)
中性子非弾性散乱実験によるダイナミクス研究
中性子非弾性散乱は、マグノンやフォノンなどの素励起を観測し、物質中の原子やスピンの相関を調べる強力な手法です。本コースでは、反強磁性体の単結晶試料を用いた中性子実験を行い、磁気励起を観測することで実験方法を学び、データ解析を通してスピンの運動を理解します。
HODACA (C1-1, JRR-3)
多重型三軸分光器 HODACA を用いた磁性体の中性子散乱研究
三軸分光器は、 1950 年代に開発されて以来、磁気励起や相転移の研究において中心的な役割を果たしてきた。近年では、多数のアナライザーと検出器を備えた多重型三軸分光器の開発によって測定効率が大幅に向上している。 2021 年に JRR-3 に建設された多重型三軸分光器 HODACA は、チョッパー分光器が得意とする広い運動量空間の効率的な測定能力と、従来型三軸分光器が得意とする特定の q–E 空間に対する高感度・高分解能測定能力を兼ね備えている。本ハンズオントレーニングでは、磁性体の磁気励起および磁気秩序変数の測定を行い、中性子散乱を用いた磁性研究について実践的に学ぶ。
AGNES (C3-1-1, JRR-3)
アルカリ塩化物水溶液における拡散ダイナミクス
中性子準弾性散乱法は、物質中の原子、イオン、分子のミクロスコピックな緩和現象を調べる有用な手法である。本 hands-on training では、アルカリ塩化物水溶液の拡散ダイナミクスを測定し、アルカリ塩の種類が拡散係数に与える影響を調べる
Diffraction
SPICA (BL09, MLF)
中性子回折および結晶構造解析実習
MLF BL09の特殊環境中性子回折装置(SPICA)はパルス中性子を利用した高分解能中性子回折装置である。本装置を利用し、物質の結晶構造を調べることができる。本ハンズオン実習では、試料準備、SPICAを利用した中性子回折データの計測方法、結晶構造解析(リートベルト解析)等について体験する。
PLANET (BL11, MLF)
高圧下における粉末構造解析
PLANET中性子回折装置を用いた高圧構造解析の実習を行い、以下のことを学習する。
-パリ・エディンバラプレスを用いた氷の高圧多形(氷VII)の合成
-データ収集
-格子定数の精密化および試料圧力の決定
-氷VIIの圧縮率の決定
-リートヴェルト解析および原子間距離の圧力依存性の観察
-水素結合に対する圧力の影響の調査
SENJU (BL18, MLF)
単結晶中性子回折による構造解析
材料の物性および機能は、その内部における原子の配列と密接に関連します。結晶性材料の構造を原子レベルで決定する主な手法として回折法が用いられますが、特に、軽元素の位置や磁気モーメントの配列が機能解明の上で重要な物質では、単結晶中性子回折が強力な手法となります。
本コースではBL18(SENJU)を用い、単結晶中性子回折による結晶構造解析および磁気構造解析について、講義と実習を行います。実習では、磁気相転移前後でのMnF₂単結晶の回折測定とデータ処理を行ったうえで、JANA2020を用いた原子および磁気スピンの配列の決定を行います。
RESA (T2-1, JRR-3)
意図的に“悪いデータ”を作る実験
本実験は、中性子回折を用いた集合組織(テクスチャ)解析において、測定データ品質が極点図および方位分布関数(ODF)の再構成結果に与える影響を理解することを目的とする。
通常、回折データは適切に取得されたものとして解析されるが、実際には測定時間や測定範囲の制約により統計ノイズや系統誤差が不可避に含まれる。そのため、データの信頼性と解析結果の妥当性を評価した上で解釈することが重要である。本実験では、意図的に測定条件を劣化させたデータを取得し、正常データとの比較によりその影響を明確化する。
基準として、明瞭なテクスチャを有する冷間圧延材を用い、十分な測定時間と適切な極点図カバレッジ、正確なアライメント条件で測定し「正常データ」を得る。一方、測定時間短縮などにより統計精度を低下させたデータを取得し比較する。統計精度の低下は回折強度の揺らぎを増大させ、極点図の不安定化やODF再構成における配向強度の過小評価、非物理的な揺らぎを引き起こす。また、測定条件の不備はODF再構成の安定性や解の信頼性を低下させる要因となる。
データ解析では、統計ノイズ、極点図の対称性、データの整合性を指標として品質を評価し、正常データとの比較からODFの再現性を検討する。さらに、得られた結果について、妥当な解釈の範囲と過剰な解釈となる領域を区別し、測定条件との対応関係を論理的に整理する。
最終的に、データ品質の問題点とその要因、ならびに改善すべき測定条件を整理する。本実験の本質は、テクスチャ解析が逆問題であり、その解の安定性と信頼性が測定条件に依存することを理解する点にある。これにより、データの限界を踏まえて解釈し、限られた測定時間の中で適切な実験条件を設計する能力の習得を目指す。
FONDER (T2-2, JRR-3)
四軸回折計による単結晶中性子回折測定と構造解析
四軸型単結晶中性子回折計(FONDER)を用いて、単結晶試料の構造解析を体験する。四軸回折計では、単結晶の向きを精密に制御しながら個々のBragg反射を選択的に測定することで、結晶構造を高精度に決定することができる。本実習では、試料のセンタリング、反射探索、回折強度測定、構造解析までの一連の流れを実際に行い、単結晶中性子回折による構造決定法を学ぶ。試料にはイオン化合物または酸化物の単結晶を用いる予定であり、時間に余裕があれば温度変化に伴う構造変化や相転移の観測も行う。
SANS/Reflectometry
SHARAKU (BL17, MLF)
非偏極・偏極中性子反射率法による薄膜構造解析
中性子反射率実験は、薄膜試料の深さ方向における膜構造や磁気構造のプロファイルをナノメートル精度で評価する手法である。非偏極中性子を用いることで、薄膜の膜厚、密度、界面の粗さを評価可能である。さらに中性子のスピンを揃えた偏極中性子を用いることで、磁性薄膜内部の磁気モーメントの大きさや向きの深さ分布(磁気構造)を詳細に解き明かすことができる。
本ハンズオンセミナーでは、J-PARC MLF の TOF タイプの中性子反射率計 SHARAKU (BL17) を使用する。本装置は非偏極および偏極実験の双方が実施可能である。高分子薄膜あるいは磁性薄膜を試料として用いた反射率測定・解析を行い、受講生の各自の研究に直結する実践的な技術習得を目指す。
SANS-U (C1-2, JRR-3)
異種分子を見分ける:コントラスト変調SANSによる多成分材料のナノ構造解析
重水素と軽水素で中性子の散乱能が大きく異なるため、材料の構成成分を重水素化すると中性子に対するコントラストを大きく変えることができる。この性質を利用すると、複数の成分が混合した多成分材料における各成分のナノ構造を分離して観察することが可能となる。本実験では、複数種類の溶質が水中に分散した多成分溶液において、溶媒である水の重水分率を変えたコントラスト変調SANS測定を行うことで、異なる溶質を中性子の目で見分けることを試みる。
Imaging
RADEN (BL22, MLF)
中性子イメージングによる物体内部構造の可視化
中性子イメージングは、中性子の特性を利用した非破壊観察技術であり、X線と比較して高い透過力を有することや、水素・リチウム・ホウ素などの軽元素に対して高い感度を示す点が特徴である。そのため、大型試料の内部の二次元・三次元構造の可視化や、物体内部における水分の分布および挙動の解析に広く利用されている。
さらに、パルス中性子を用いることで、中性子イメージングはより高度な機能を持つ。飛行時間(Time-of-Flight: TOF)法による「エネルギー分析型中性子イメージング」により、結晶構造、元素分布、熱状態、磁気特性といった情報の空間分布を可視化することを可能にする。
本実習では、従来の中性子イメージング(中性子ラジオグラフィおよびトモグラフィ)の基礎から、パルス中性子ビームを用いた先進的なイメージング技術までを扱う。また、RADEN装置を用いたデモンストレーション実験およびデータ解析を通じて、実践的な理解を深める。
Neutron-Nuclear Reaction
ANNRI (BL04, MLF)
中性子全断面積の測定
本実習では、J-PARC MLF のビームライン BL04 を用いて、中性子と原子核の相互作用に関する詳細な測定を行う。BL04には、中性子捕獲反応で放出されるガンマ線を測定するための検出器(HPGe検出器およびNaI検出器)、及び、試料を透過した中性子を測定するための中性子検出器が整備されている。これらの検出器を用いることで、中性子捕獲断面積や全断面積の高精度測定を行っている。
本実習では、金(Au)試料に対する中性子透過率を測定し、その結果から全断面積を導出する。データ解析にはCERNのROOTを用いたプログラムを利用し、それを用いた解析を行う。得られた結果を既存のデータと比較・検討することで、測定および解析手法への理解を深めることを目的とする。
Muon
超低速ミュオンを用いた薄膜試料の深度分解ミュオンスピン分光
ミュオンはスピン偏極した量子ビームとして物質科学の分野で幅広く応用されています。物質中にミュオンを打ち込み、崩壊生成物の角度異方性から局所磁場や揺らぎなどを調べる実験手法を「ミュオンスピン回転/緩和/共鳴 (µSR)法」と呼びます。µSR法で主に使用されるのは「表面ミュオン」と呼ばれるビームで、これはミュオン生成標的の表面付近でパイ中間子が崩壊する際に得られます。表面ミュオンは高い偏極率と単色性を持ちますが、4 MeVという比較的高いエネルギーを持つため物質中での飛程が長いために薄膜試料の測定は困難です。そのため、ナノメートルオーダーの薄膜や物質内部の界面を研究するにはkeVスケールの低エネルギーミュオンが必要となります。
MLF MUSEの超低速ミュオンビームラインでは、真空中に生成した熱ミュオニウムをレーザーでイオン化することにより、低エネルギーのパルスミュオンを供給しています。U1A実験エリアでは高電圧ステージ上にミュオンスピン分光器が設置されており、ミュオンの打ち込みエネルギーをサブkeVから30 keVの範囲で制御することができます。これにより、物質の表面や内部の界面にミュオンを選択的に打ち込むことが可能となり、深さごとの情報を取得できる「深度分解µSR」が実現します。さらに、超低速ミュオンビームのパルス時間幅はわずか数ナノ秒と短く、通常のパルスビームを用いる場合よりも広い周波数領域でのダイナミクス研究が可能になります。
本実習では、超低速ミュオンの生成メカニズムやビーム輸送系について学ぶとともに、実際に薄膜試料を用いた超低速ミュオンµSR(USM-µSR)実験を体験します。