近年量子デバイスや量子コンピュータが目覚ましく発展し、実応用に向けた開発が精力的に行われている。しかしながら量子系の運動は複雑で、量子デバイスの解析や制御には高度な技術が必要とされてきた。我々のグループでは、この問題を解決するため、AIによる量子系の解読および機能創出に挑戦した。講演では、最先端の深層学習技術を量子伝導現象および量子コンピュータに応用した成果を紹介する。
イオン源の非破壊ビームモニターとして、我々は機械学習を用いた手法の開発を行っている。これまでに、14GHzECRイオン源(HyperECRIS)において、プラズマチェンバー内の光を引き出し電極から撮影した画像を使用することで予測精度が向上することを明らかにした。今回、本手法を理研の28GHzECRイオン源にも応用し、汎用的な手法であることを示した。 本発表では、機械学習によるビーム強度予測を28GHzECRに応用した結果と、長期間のビーム供給時にイオン源の運転パラメーターを変化させた際の再学習による補正について報告する。
RCNPサイクロトロン施設では、ビーム供給の安定運用のため、様々な方策に取り組んでいる。RFシステムでは、RFアンプからDee共振器へパワーを伝送する同軸管における進行波および反射波の挙動から、不具合を予測するシステムを検討している。進行波・反射波それぞれの信号をオシロスコープで取得し、正常時とクローバー回路作動直前の波形にラベルを付与してニューラルネットにより学習させた。この学習モデルを用いてテストデータにより予兆検知を行った結果、故障を予測できる可能性が示された。これにより、RFシステムの安定運用および長寿命化につながることが期待される。
J-PARCは建設開始から数えると20年以上が経過しており、近年機器の経年劣化によるトラブルが頻発していることから、ユーザーの利便性を高めるため稼働率の向上が必須の状況である。本発表では、これまでに発生したトラブル事例とその対策、さらに現在進めている機械学習を用いた異常診断システムの状況について報告する。
J-PARC muon g-2/EDM実験ではコンパクトな蓄積軌道にビームを入射するため、3次元らせんビーム入射という新しいビーム入射手法を開発している。この方法は入射途中に強いXY結合に加えて縦方向への微小な結合と微小な非線形性を有する複雑なビーム力学系を有している。この様な系を理解し設計・制御するため、様々な効果を含む転送写像をニューラルネットワークとみなすことで機械学習の文脈を活用できないか検討し始めた。本講演では、検討の状況について報告する。
大強度ビームでは空間電荷効果により縦横方向の位相空間分布が相互に影響を及ぼし合うことが知られている。J-PARCリニアック初段部で測定可能なビームプロファイル画像から空間電荷効果の寄与を利用して畳み込みニューラルネットワークでビームパラメータを推定する手法について開発を進めている。本講演では、ビームパラメータ推定に関しての検討すべき誤差要因とその対策方針に関して紹介する。
強化学習による機器の制御は非常に興味深い試みである。しかし、実際の機器を用いて強化学習を始めるには機器の損傷等のリスクがある。このリスクを避ける為に、実機を模擬したシュミレーターや事前に収集されたデータを使用する強化学習のアルゴリズムが考えられている。今回、簡単な例を用いてそれらのアルゴリズムによる強化学習を行なったのでその結果について議論する。
我々は2025年10月、低エネルギービームラインにおいて 7MeV/u, 400 enA 程度の 12C ビームに対してsafe line BO による transport 最適化テストを行った。 最終的にビームの輸送効率の向上には至らなかったものの、safe line BO 及び一般的な自動最適化の実装についていくつか知見を得られたため、本発表ではそれらの知見を反省を交えながら報告する。