
近年、加速器施設においては、供給ビームの高度化および安定化を機械学習によって実現する取り組みが各所で進められ、着実に成果を上げている。こうした技術の高性能化に伴い、機械学習を活用した加速器調整・最適化・安定化に関する様々な手法について、情報を共有・交換する場の重要性が高まっている。
本ワークショップでは、前回に引き続きこれまで加速器・ビーム物理コミュニティにおいて進められてきた、加速器運転・調整や供給ビームの診断に関する機械学習の開発状況を俯瞰するとともに、各施設における最新の取り組みや今後の計画について、活発な議論を行うことを目的とする。これにより、加速器関連分野における機械学習のさらなる発展が期待される。
対面とZoomのハイブリッド開催とします。ただし、発表については原則現地での口頭発表とします。
発表言語は日本語または英語とします。
なお、学生の方の発表は約15分を予定しております。
一般枠同様の時間での発表を希望される方はabstract投稿時のコメント、もしくはメールにてご相談ください。
講演は、zoomの録画機能を用いて動画として保存致します。録画に支障がある場合や希望がある場合は、事務局までご一報ください
15~30分程度の一般講演を募集します。Registrationより講演申し込みをしてください。
現地で発表される学生を対象とした旅費の補助を行う準備をしております。その他旅費の補助が必要な若手研究者につきましてもご相談ください。なお、予算に限りがございますので、希望される場合は早めのご連絡をよろしくお願いいたします。
Registrationに入力していただいた内容はワークショップのプログラム作成のみに使用する予定です。
様式などについては特に指定はありません。講演内容が分かる内容 (目的・手法など) をご記入ください。
「Registration」より申し込みをお願いします。
(参加費無料)
2025年12月8日(月)~9日(火)
注:初日12月8日(月)は朝9時20分より開催です。
茨城県那珂郡東海村船石川駅東三丁目7番25号
Tokai Mirai Base
3 階 会議室
※JR東海駅から徒歩6分です。
東京/水戸方面よりお越しの場合、08:33もしくは08:53東海着の普通電車、もしくは09:01着の特急をご利用下さい。日立方面からお越しの場合、08:47もしくは08:58東海着をご利用下さい。

J-PARCセンター https://j-parc.jp/c/
加速器機械学習フォーラム https://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/Divisions/acc/accml/
大阪大学 核物理センターデータ収集基板室
理化学研究所 TRIPユースケース 元素変換
過去のワークショップリンク
第一回HP https://indico.rcnp.osaka-u.ac.jp/event/2006/
近年量子デバイスや量子コンピュータが目覚ましく発展し、実応用に向けた開発が精力的に行われている。しかしながら量子系の運動は複雑で、量子デバイスの解析や制御には高度な技術が必要とされてきた。我々のグループでは、この問題を解決するため、AIによる量子系の解読および機能創出に挑戦した。講演では、最先端の深層学習技術を量子伝導現象および量子コンピュータに応用した成果を紹介する。
イオン源の非破壊ビームモニターとして、我々は機械学習を用いた手法の開発を行っている。これまでに、14GHzECRイオン源(HyperECRIS)において、プラズマチェンバー内の光を引き出し電極から撮影した画像を使用することで予測精度が向上することを明らかにした。今回、本手法を理研の28GHzECRイオン源にも応用し、汎用的な手法であることを示した。 本発表では、機械学習によるビーム強度予測を28GHzECRに応用した結果と、長期間のビーム供給時にイオン源の運転パラメーターを変化させた際の再学習による補正について報告する。
RCNPサイクロトロン施設では、ビーム供給の安定運用のため、様々な方策に取り組んでいる。RFシステムでは、RFアンプからDee共振器へパワーを伝送する同軸管における進行波および反射波の挙動から、不具合を予測するシステムを検討している。進行波・反射波それぞれの信号をオシロスコープで取得し、正常時とクローバー回路作動直前の波形にラベルを付与してニューラルネットにより学習させた。この学習モデルを用いてテストデータにより予兆検知を行った結果、故障を予測できる可能性が示された。これにより、RFシステムの安定運用および長寿命化につながることが期待される。
J-PARCは建設開始から数えると20年以上が経過しており、近年機器の経年劣化によるトラブルが頻発していることから、ユーザーの利便性を高めるため稼働率の向上が必須の状況である。本発表では、これまでに発生したトラブル事例とその対策、さらに現在進めている機械学習を用いた異常診断システムの状況について報告する。
J-PARC muon g-2/EDM実験ではコンパクトな蓄積軌道にビームを入射するため、3次元らせんビーム入射という新しいビーム入射手法を開発している。この方法は入射途中に強いXY結合に加えて縦方向への微小な結合と微小な非線形性を有する複雑なビーム力学系を有している。この様な系を理解し設計・制御するため、様々な効果を含む転送写像をニューラルネットワークとみなすことで機械学習の文脈を活用できないか検討し始めた。本講演では、検討の状況について報告する。
光が粒子性と波動性を併せ持つことは広く知られており、放射光もこの二重性を有する。例えば、放射光蓄積リングにおける電子バンチが空間的・エネルギー的広がりを持つのは、それぞれの電子が偏向磁石中で放射光を粒として放出し、これが確率的に生じることに起因している。その一方、放射光は波の性質を有することは様々な干渉実験で示されている。今日、情報・通信技術から計測技術まで様々な分野で量子力学を基礎とする革新的技術の開発が進められている。我々は、放射光の量子性に着目し、その計測・センシング技術への応用可能性を探りたいと考えている。そのためには、光子一つひとつの量子論的な性質を調べることが基礎研究として重要である。私たちの研究グループでは、蓄積リング中に電子を一つだけ蓄積するようにした単一電子蓄積と呼ばれる技術を用いて、電子から光子が高々一つしか放出されない条件で実験を行い、放射光の量子論的特性を調べている。 本研究では、光子の粒子性と波動性の二重性を示す非常に基礎的な実験を行った。具体的には、単一電子から放射された光子を直角ミラーを用いて空間的に分割し、PMTで測定することで光子の角度広がりと粒子性を確認し、その後、光学系からミラーを取り除いてダブルスリットに入射し、CCDカメラによって干渉の様子を観測した。光子の波動性から、実験条件である単一光子下でも干渉縞が見られると期待されるが、3600秒露光して得た結果は光量が非常に小さいため、光子が来ている領域は認識できるが、干渉縞があるかは定かではなかった。従って、電子数がある程度あるときに取得した画像を教師データとして機械学習に用いて、単一電子蓄積下における画像の特徴量を抽出しようと試みた。
本研究では、グラフニューラルネットワーク(Graph Neural Network, GNN)および説明可能AI(Explainable AI, XAI)を用いて、KEK電子陽電子入射器の調整性能向上に寄与する重要パラメータの推定を行った。本研究の目的は、複雑な加速器運転調整機構を理解し、ビーム透過率の向上およびエネルギー損失の低減を実現することである。先行研究では、多層パーセプトロン(Multi-Layer Perceptron, MLP)を用いて入射効率やエネルギー損失を予測し、XAIにより重要度の高いパラメータを推定した。しかし、MLPを基本としたモデルでは、入力パラメータ数が約1000を超えると過学習が生じ、予測精度が低下するという課題があった。本研究では、この問題を回避し、構成要素が多い大型加速器制御でも機械学習の適用を可能にするため、GNNを用いた 機械学習手法を開発した。GNN は、ノードとエッジから構成されるグラフ構造を入力とし、要素間の関係性を学習できる機械学習モデルである。加速器内の多様なパラメータをユニット情報に基づいてノードおよびエッジとして表現し、加速器構造を反映したグラフデータを構築した。さらに、構築したGNNモデルに対してXAIを適用し、入射効率向上およびビームロス低減に寄与する重要パラメータを推定した。本発表では、これらの手法および得られた結果について報告する。
科学研究の根本的課題の一つは、限られた観測量から系の内在状態を推定することである。しかし、複雑に結合したシステムでは、この「反演」は必ずしも完全に可逆ではない。情報は伝達の過程で圧縮・重畳・非線形的に結合され、異なる内部状態が類似した観測結果を示すことがある。 大型リニアックの場合、その一例として、加速空洞のランダム誤差が運動量ドリフトを引き起こし、観測できるのは位相モニタや飛行時間モニタなど限られた情報に限られる。空洞数とモニタ数が数学的には対応していても、応答の累積性と非線形性により、物理的に非可逆となる。 我々は大規模シミュレーションにより、空洞誤差と測定位相の対応関係を構築した。初期の解析では、順方向モデル(誤差→測定)は高精度に学習可能であったが、逆方向モデル(測定→誤差)は汎化に失敗し、観測情報のランク低下や局所的非識別性に起因して不安定であった。しかし、この失敗の分析から、モデルの表現力が不十分であること、そして訓練データの多様性が不足していることが明らかになった。より高次の非線形構造を持つモデルを採用し、広範なパラメータ空間をカバーするデータを追加することで、逆問題の再現性が大幅に向上した。 この結果、観測データから空洞誤差分布を高精度に推定できるようになり、実機挙動と仮想モデルが動的に対応する、いわばデジタルツインとしての状態が実現した。これにより、データ駆動型の全体運動量補償スキームが可能となり、エネルギードリフトの安定化を達成した。 本研究は、可逆性が単なる数学的性質ではなく、情報量・モデル構造・データ分布の三者によって決まることを示すものである。この「部分的可逆性」の理解と活用こそが、順・逆学習を基盤とする知的補償やデジタルツイン構築の鍵となる。
大強度ビームでは空間電荷効果により縦横方向の位相空間分布が相互に影響を及ぼし合うことが知られている。J-PARCリニアック初段部で測定可能なビームプロファイル画像から空間電荷効果の寄与を利用して畳み込みニューラルネットワークでビームパラメータを推定する手法について開発を進めている。本講演では、ビームパラメータ推定に関しての検討すべき誤差要因とその対策方針に関して紹介する。
J-PARCのRCSでは、大強度ビームを生成するペイント入射に、4台の水平ペイントバンプ電磁石と2台の垂直ペイントバンプ電磁石を用いる。ペイントバンプ電源は、IGBTユニットを使用した整流器とチョッパ回路による間接変換装置で構成されている。励磁電流の波形を台形波形や減衰関数波形など任意に設定して出力することができ、現在の運転では、設定値と出力値の偏差が±0.2%以下の高精度制御を達成している。しかし、電磁石の負荷インピーダンスは入力波形に対して非線形性を有するため、1つの波形パターン調整に1時間程度を必要とする。大強度ビーム生成試験などでは、6台のペイントバンプ電源にそれぞれ15パターンで全90種の波形パターンが求められるため、パターンを作成するために数日の調整時間を要することから、ペイントバンプ波形パターンの調整時間短縮が求められる。そこで、指令電圧波形と出力電流波形における非線形の関係をニューラルネットワーク(NN)で記述することにより、任意の出力電流波形に対して適切な指令電圧波形を瞬時に求められるようにした。本論文では、使用したNNの構成や学習に使用した波形データ、及び、評価結果について報告する。
陽子シンクロトロンでは、加速開始から終了まで高周波電圧をパターンとして変化させる。加速基本波のみのパターンの場合は、解析的な式を用い、縦方向のエミッタンスとモーメンタムフィリングファクターをパラメータとしてパターンを求めることができる。一方、大強度陽子加速器では加速基本波に加え2倍高調波電圧を加えた運転によるバンチ操作が必要となってくるが、この場合最適な電圧は自明ではなく、最適化は縦方向トラッキングシミュレーションを援用しながら手作業で行っているのが現状である。ここに、深層強化学習は手順の最適化に適した手法であることから、これをパターンの最適化に用いることができるのではないかと考えた。実装はまだまだ追い付いていないのが現状であるが、パターン最適化の構想について報告する。先達の方々のフィードバックを頂ければ幸いである。
強化学習による機器の制御は非常に興味深い試みである。しかし、実際の機器を用いて強化学習を始めるには機器の損傷等のリスクがある。このリスクを避ける為に、実機を模擬したシュミレーターや事前に収集されたデータを使用する強化学習のアルゴリズムが考えられている。今回、簡単な例を用いてそれらのアルゴリズムによる強化学習を行なったのでその結果について議論する。
MLFでの機械学習の活用例として、中性子実験多次元データのディープラーニングを用いたデノイズを中心に発表する。
RIBFは、ウランまでの全元素にわたる不安定原子核を生成可能な重イオン加速器施設である。複数のサイクロトロンを多段的に組み合わせることでビームを加速し、大強度のビームを生成することができる。しかし、ビーム輸送中の損失が大きい場合、加速器の運転に支障をきたすため、電磁石設定によるビーム調整が極めて重要となる。 このようなパラメータ最適化にはベイズ最適化が有効な手段であるが、通常のベイズ最適化では最適化過程でビーム損失が増大する可能性がある。また、多次元パラメータ空間での最適化は計算コストが高く、実時間での運用が困難であるという問題がある。 そこで本研究では、安全制約付きベイズ最適化手法である SafeLineBO を用い、安全性を確保しつつ多変数を一次に射影して最適化を行うことで、ビーム調整を安全かつ高速に実現する手法の開発を行っている。 本発表では、モンテカルロシミュレーションにより再現されたビーム輸送モデルを用い、SafeLineBOによるビーム最適化手法の有効性を報告する。
我々は2025年10月、低エネルギービームラインにおいて 7MeV/u, 400 enA 程度の 12C ビームに対してsafe line BO による transport 最適化テストを行った。 最終的にビームの輸送効率の向上には至らなかったものの、safe line BO 及び一般的な自動最適化の実装についていくつか知見を得られたため、本発表ではそれらの知見を反省を交えながら報告する。
SACLA/SPring-8 で開発, 導入している Gayssian Process based Bayesian Optimizer の効率化, 高度化に向けた取り組みについて紹介する。効率化について、調整開始直後に適当に何点かデータを取ってから最初のモデルを構築するが、現状はパラメータ各軸方向の2点と初期値の 2N+1 (N: パラメータ数) を取得している。これを超球に内接する正単体(N+1)と初期値の N+2 点にすることで、大きなNについて約半数の点数で最初のモデル化ができるようにすることを検討している。また、初期サンプルに各パラメータ軸上成分だけでなく、クロスタームの情報も取り込まれることによる効率化にも期待している。高度化については、Trust region BO, Time-varying BO, Constrained BO などを既存のフレームワークに実装中である。これらの取り組みについて紹介する。
データ駆動科学において、物理パラメータやモデルをデータから推定した際の不定性を評価することは重要であり、また時に有用である。本講演では、ベイズモデリング、physics informed machine learningといったモデル化枠組みにおける不定性の評価方法と活用方法について紹介する。