2次ビームを実験に使用するためには、加速器で加速された粒子ビーム(1次ビーム)を標的に入射し、電磁相互作用による反応や原子核反応によって2次ビームとなる粒子を生成する必要がある。その際、標的中で1次ビームが多くのエネルギーを失うため、2次ビームとして使用する、目的とする粒子の他に色々な種類の粒子が生成する。高いエネルギーを持つ粒子(光子を含む)は放射線と呼ばれる。
本講義では、原子、原子核の構造、2次ビーム生成に伴い発生する放射線の種類、および放射線と物質の相互作用について、初学者を対象に説明する。
C. Andersonが1932年に霧箱で見出した陽電子は、1950年代には物質研究への応用が開始された。当初放射性同位体からの広いエネルギー分布を持つ「白色」陽電子が用いられたが、1980年代半ばから負の仕事関数を利用した陽電子に独特の方法によるエネルギー単色化技術が確立し、陽電子ビーム(低速陽電子ビーム)を用いた物質研究が盛んになった。その後原子炉や加速器を用いたより高強度の低速陽電子ビームの生成が可能となり、陽電子回折や、陽電子と電子の水素原子様束縛状態のポジトロニウムに関する研究が新たな展開をむかえている。本講義は、KEKの加速器を用いた高強度低速陽電子ビームの生成・輸送技術とその物質研究への応用を中心に解説する。
J-PARC ハドロン実験施設で行っているKOTO実験は中性K中間子の稀崩壊事象を観測することて、いまだに見つかっていない新物理の発見を目指している。この崩壊の分岐比は高い精度で計算され、30億分の1となっている。非常に小さい分岐比は新物理の発見を容易にさせるが、測定のためには特化した検出器とビームラインを用いた実験が必要である。本講義では、KOTO実験及び中性ビームラインを紹介する。
HD荷電二次ビームラインJ-PARCハドロン実験施設では、主リングで加速された一次陽子ビームを生成標的に当てmそこで発生するπ中間子、K中間子、反陽子などの様々な粒子を二次ビームとして実験室まで輸送して、素粒子原子核分野の実験研究に利用している。本講義では、現在運用中、または将来建設予定の荷電二次ビームラインについて、そこで行われる実験の内容も簡単に触れながら、それぞれのビームラインの特色とその設計を紹介する。
J-PARCハドロン実験施設では、主リングで加速された一次陽子ビームを生成標的に当てmそこで発生するπ中間子、K中間子、反陽子などの様々な粒子を二次ビームとして実験室まで輸送して、素粒子原子核分野の実験研究に利用している。本講義では、現在運転している固定型標的の設計の詳細と、開発中の回転標的のR&Dの現状を紹介する。
中性子をプローブにする物質科学研究や生命科学研究は、強度重視の科学とも言われ、中性子源には、高い中性子強度を求められる。陽子ビームを利用した核破砕中性子源の場合は、陽子ビーム出力に大きく依存するが、中性子源構成の最適化と適切な工学設計により、中性子強度を大きく上げることができる。
本講義では、J-PARC核破砕中性子源を主として、陽子ビーム入射から中性子ビーム供給までの中性子生成過程を説明し、中性子生成ターゲットの種類とその性能、その最適化について、講義を行う。
J-PARC物質・生命科学実験施設MLFでは、中性子源を取り囲むように、23本の中性子ビームラインを設置し、うち、21本に中性子分光器を設置して、それぞれ特色ある実験研究を推進している。本講義では、中性子ビームラインのうち、BL12に設置した高分解能チョッパー分光器HRCを例にとり、実験研究や装置構成を紹介する。
RIビームラインは、加速器で加速された安定な原子核ビームから核反応によって不安定な原子核を作り出し、その中から特定の原子核を選び出して集めてビームとするものです。理研の超伝導RIビーム分離生成装置BigRIPSは、2007年に稼働をはじめた、世界で最も高い強度のRIビームを生成しているRIビームラインです。講義では、核反応で生成した多様な原子核の中から特定の原子核をどのようにして選び出すのかその原理に触れたのち、RIビームの生成ターゲットにみられる特徴について説明します。