採用後三年目までの期間で行った、様々な実験装置の設計や工作機械を用いた製作について発表する。
これまでにフライス盤や旋盤、ボール盤や溶接、ワイヤーカット放電加工機等の工作機械を用いて、アルミ合金やステンレス合金、銅合金やニオブ材料といった様々な材料を実際に加工し加工条件や加工方法などの技術を習得した。
機械加工では材料の種類や厚さによって、加工条件等や加工方法を検討しないと加工が困難で危険を伴う作業がたくさんある。汎用機械からマシニングセンターを用いた加工について様々な製造依頼を通して感じた、機械加工を行う際の工夫点や注意点等を紹介する。また、製造依頼での経験を活かして製作した自由落下装置についても紹介する。
KEK機械工学センターでは真空炉を使用して熱処理やろう付けを行うことができる。大気炉でこれらの処理を行った場合、処理品に酸化膜が付着し外観も汚れるため、性能を発揮できなくなる場合もある。真空環境では酸素も炭素も存在しないため、美しい外観のまま処理を行うことが可能である。最高で1000℃程度での使用が可能であり、炉内の大きさは300x300x400mm、真空排気には油拡散ポンプを使用している。処理する主な材質はニオブ、銅、アルミ、ステンレス、チタンなどである。本発表では2018年度から2023年度までに行った熱処理やろう付けについて報告する。
J-PARCハドロン実験施設では、2次粒子生成標的として1次陽子ビーム強度100kW以上の大強度ビームに対応した回転円盤型標的の開発を進めている。円盤形状の標的を回転させることにより熱負荷を円周方向に分散させることで、より大強度のビームを受けられるようにするものである。より冷却能力を高めるために円盤の形状をフィン型にしている。回転円盤型標的の開発を進めるにあたって冷却方法が問題となる。ヘリウムガスを吹き付けることによる直接冷却式を検討しているが、直接水冷式と比べると冷却能力(熱伝達率)は落ちてしまう。熱伝達率は理論的な算出が困難であるため実験による計測が必要となる。そこで、冷却能力を評価するための実機形状を模擬した装置を構築し、データの測定を進めている。本発表では、回転円盤における熱伝達率の測定結果について報告する。
「装置の管理」 私はSQUID磁化測定装置 MPMS、熱分析装置TG-DTA/DSC、粉末XRDを主に管理しています。日常的な業務としては装置への寒剤の供給、ユーザー対応があります。その他に標準試料を用いた装置の温度、磁場のチェックを行っており、XRD装置の温度加熱ユニットでは表示温度と試料温度の校正表を作成しました。また、最近はマニュアルのビジュアル化を進めています。 「小物作成」 装置周辺の試料準備時に便利そうな小物やメーカーから買うと高額なものを作成しています。3D CADでデザインして所内の3Dプリンターで出力しています。上記2点について、当日は実物や写真を示して、工夫点などを交えて発表する予定です。
分子研UVSORの光源開発用ビームラインBL1Uは、放射光施設としては珍しい加速器グループより開発運営を行っている。技術職員側では、このビームラインの光学系の設計やチャンバーの設計・設置、維持を行っている。また、真空紫外光を利用するユーザー支援の一環として、実験計画や実験条件の構築に参加し、放射光利用が初めてユーザーでも比較的障壁を低くすることで参入をしやすくしている。今回は、BL1Uでの開発の現状とユーザー支援の実例を含めて業務の現状について報告する。
「かがくのおもちゃ箱」は、1997年から長岡技術科学大学の教員・技術職員と学生ボランティアが中心となり毎年開催している理科実験教室である。2023年度から化学に留まらず生物学・物理学も含む自然科学に関わる題材を提供することを目指し、名称を「化学」から「かがく」へと改めた。そこで、本年度は学部1年生物学生実験のテーマの一つである「プラナリアの再生」を題材に、未就学児~小学校中学年向けにアレンジした生き物を扱う新しいテーマを立ち上げた。本発表では、新テーマの実験内容や対象年齢を下げるうえでの工夫、得られた知見などを報告する。
京都大学複合原子力科学研究所電子線型加速器施設(ライナック)は、設置から約60年経過した国内で稼働する線型加速器で最も古い装置である。大電流でエネルギー可変範囲の広いビームを供給できる等のユニークな特徴から、これまで共同利用・共同研究拠点の装置として多種多様な利用が行われてきた。コロナ禍前の2019年度までは運転時間が年間約2500時間に上り、来年度以降はその水準に回復することが予想される。このように今後も活発な利用が見込まれる点を評価され、複数の大規模な改修を行うことができた。本発表では、ライナックの特徴と利用に関する紹介、改修の一つである加速器制御系と配線更新の際に起きたトラブル対応について報告する。
分子科学研究所内で3Dプリンターを使ったモノづくりサービスを開始して5年が経過しました。3DプリンターはFDM方式、SLA方式、UV硬化インクジェットフルカラー方式の3種類を用意しています。一番材多い依頼はFDM方式で実験器具またはその一部や治具などを製作するもので、色は光を扱う実験室の場合に黒が指定される程度で特に指定がない場合がほとんどでした。しかし最近、SLA方式やUV硬化インクジェットフルカラー方式のプリンターを使用すると透明なものも作ることができるという事が認知され、透明色を使用した製作依頼も寄せられるようになりました。そういった中で実験装置用の透明なカバーや中身が透けて見えるタンパク質模型などを製作しましたので、今回はそのサンプル品とともに透明なモノづくりをご紹介します。
我々大学等の技術職員の主たる業務の一つは、学生達の教育及び研究活動に係る支援であり、中でも化学分析機器による実験及び測定の補助業務が大きな割合を占めるという職員は多いと推定される。しかし、各種分析機器の取り扱い頻度は当然ながら各々の職場環境によって差があり、そのため類似の専攻を持つ職員同士であっても同一機器の習熟度に大きな差が生じることも起こり得る。そこで発表者らは、学内で実施されている技術部特別研修へ応募し、これに係る研究活動を通して分析機器の取り扱いについて互いに教示し合うことにより、職員相互の知識及び技術の向上に努めている。ここでは実際に研修で取り扱った分析機器及び取り組んだテーマについて紹介する。
将来の核融合炉では、炉壁に入る熱を如何に制御するかが核融合工学上、最も重要な課題のひとつとなっている。なかでも炉壁材料として、高融点材料のタングステンと高熱伝導材料の銅合金の接合材料が有力視されているが、熱膨張率の大きく異なる材料の接合は極めて難しい。核融合科学研究所では、技術部が中心となり、本接合技術の開発に取り組む中でプラズマ放電による接合技術を確立し、従来手法より接合強度を大幅に向上させることに成功した。その後、本技術を用いて炉壁試験体を製作、プラズマ実験に供し、核融合研究の進展に貢献することができた。本講演では、本接合技術開発の取り組みおよび核融合実験装置への応用展開について紹介する。
植物性の繊維を混ぜ合わせたコンクリートで考えられる性質のひとつとして、保水効果がある。その性質を利用し地表面温度の低減効果を狙い、歩道用コンクリートブロックとして用いることを検討したいと考えた。そこで、複数の試験体を同時に同条件で測定する方法を考えた。本稿では、その試験方法および赤外線放射温度計を用いてコンクリート表面の温度変化を計測した結果の一例を紹介する。試験結果として、歩道用コンクリートブロックの地表面温度の低減効果を一定程度確認できた。また、試験体表面温度を測定する上で、赤外線放射温度計とサーモグラフィカメラの使い分けが必要になることが把握できた。
風洞実験をはじめとする流体計測では流速や力、渦、乱れ、騒音などを評価する必要があるため、多数の計測機器を用いる。それらの計測機を複数台用いることや異なる計測機同士を連動させ、多点同時計測を行うことは流れ場の評価を行う上で非常に有効である。本報ではグラフィカルシステム開発ソフトウエアを用いた流体計測システムの開発と、実際に大型風洞装置によって実施された計測器制御と多点同時計測を伴う各種実験へ利活用した事例を紹介するとともにシステム構築における工夫や留意点をまとめる。
近年、フォトンファクトリーではより安定した実験装置運用の為、実験室内の環境データ(空調、装置の冷却水、圧搾空気の圧力、ビームライン真空値等)の監視及び記録に関する需要が高まっている。これらの環境データ取得には、点在する多種多様なセンサーのアナログ出力をデジタル化し収集する必要があり、アナログ入力やリモート制御の機能を比較的安価に実現できる、コンテック社製のリモートI/O CONPROSYS nanoを採用した。今回は、このリモートI/OをSTARSを介して制御する、汎用的なクライアントの開発とその活用について紹介する。
2021年から23年度にかけて液体窒素自動供給装置を更新した。データ集約用のサーバーPCも更新し様々な作業が可能になったため、充填中の様子を記録してみた。液体窒素CEから大型可搬式容器に液体窒素を充填する際、最終的に移送速度は一定に安定する。液体窒素ローリーからCEに充填した直後は、この移送速度の安定値が1.5倍程度に跳ね上がり、その効果が数日ほど続くことがわかった。ポスター発表では、この液体窒素移送速度ブースター効果について報告する。
2023年5月末から、初プラズマ着火を目指して超伝導トカマク装置JT-60SAの統合コミッショニングを再開した。プラズマ着火に必要な真空を得るためには真空容器内壁を洗浄する必要がある。そこで、真空容器二重壁間に高温の窒素ガスを循環させることで内壁を約200℃に昇温して水分を始めとする内壁からのガス放出を促進する200℃ベーキング、真空容器内壁をカソードとしてグロー放電を起こすことで内壁の不純物を叩き出すグロー放電洗浄(GDC)によって不純物の低減を図った。これらの処理による真空容器内のガス種の変化について、四極子形質量分析計(QMS)を用いて真空容器内の残留ガス及び真空容器から排出されたガスの分析を実施したので報告する。
2022年度まで電力単価が上昇しており、2023年度当初の単価が維持された場合、計算科学研究センターの電気代予算を超過することが確実であった。スパコンの消費電力を減らす必要があったが、具体的な方策には様々なものが考えられた。運用ノード数は減らさない方針が示されたため、CPUのクロックをどれくらい落とすかがポイントとなった。その判断材料として、CPUの動作モードを変えて分子動力学計算の計算時間とノードの消費電力を調べた。 その後、計算に使われているCPUのコア数-GPU数と消費電力の関係の可視化と月間消費電力量の予測を行なえるようにしたが、様々な要因により消費電力に揺らぎが生じていることも紹介する。
東北大学電子光理学研究センター(ELPH)シンクロトロン加速器の偏向電磁石内に設置した光子標識化装置の開発過程を報告する。本装置は、原子核物理実験で使用する制動放射γ線のエネルギーと発生タイミングを測定するため、γ線を放出した反跳電子の軌道上に、プラスチックシンチレータと半導体光センターで構成した検出器135台を配置したものである。電磁石中に設置するため、コンパクトに設計し、筐体は非磁性材料で構成した。また、この筐体は設計上の工夫により3分割とし、容易に電磁石内外へ挿入と退避ができる可動式とした。実験時以外は電磁石外で待機することで放射線暴露による半導体センサーの損傷が軽減し、装置の長寿命化に貢献した。
弘前大学理工学研究科では、学科や研究室ごとに3Dプリンタが導入・利用されており、製作物は実験装置部材から加工治具、センサーケース等多岐にわたる。2021年度末に、工作センターへ共通機器として3Dプリンタを導入した。機器担当者の装置習熟と、研究科内への機器利用アピール目的のため、HIRODAIスタンドを制作し、学内行事への展示を行い研究科広報活動へ協力をした。製作物は早期に配布終了するなど好評を得た。本稿では、22年度から23年度の学内行事にて行った取り組みを紹介する。
本発表では、自然科学研究機構のミッション実現戦略事業におけるバイオマス活性炭の開発および技術職員の取り組みについて紹介する。本事業では、核融合研究で開発した技術を応用し、かつSDGsへの貢献を志向しており、未利用バイオマスを原料とした高機能活性炭の創製を研究開発テーマとしている。特に本開発は技術職員が主体となり、各人が担当のテーマを設定し、自主的に学びながら課題解決に取り組んでいる。これまで開発環境の整備と並行して開発を進め、そこで得られた成果を国内外の学会で発表した他、特許出願も2件達成した。さらに他機関との連携も積極的に進めており、国内の民間企業や海外の大学・研究機関との共同研究にも発展している。
放射光実験施設では、より精密に制御された微小サイズの放射光ビームが求められている。このような微小ビームを利用した実験では、今まで以上に環境変動の影響を受けやすくなるため、温湿度や冷却水流量といった環境データの需要が高まっている。今回、実験ホール内の環境データの測定と収集を行うシステムを一新し、Webブラウザ上でデータの確認が可能となる環境モニターシステムを構築した。これにより全体の環境情報の把握が容易になり、得られたデータは空調機の調整など施設整備へのフィードバックに役立てられている。本発表では環境モニターシステムの概要と環境データの活用方法を紹介する。
核融合科学研究所(NIFS)では2017年3月の重水素実験の開始に伴い、管理区域が新たに設定された。同時期より、管理区域内の清掃を目的に、管理区域内の9つのエリアにおいて掃除用ロボットの運用を開始した。NIFSでは月例の作業環境測定により、管理区域内の各作業場所に汚染がないことを確認している。本研究では、管理区域内床表面の汚染状況を確認するため、掃除用ロボットが回収した 粉塵を試料として取り扱い、汚染監視を試みた。研究会では掃除用ロボットが回収した粉塵を用いた測定手法及び結果について報告する。
KEK超伝導高周波試験施設(STF)は、2022年は超伝導加速空洞の入れ替え作業を行い、ILC実現のために同高加速電解による加速実証を行っている。ビームパワーを5倍の5.8mAに増強して運転が行われた。約700usのパルスをビーム品質を保ってビームダンプまで輸送するためには、ビームラインのアライメントも重要である。主加速部に合わせて電磁石やビームモニター系も精密に調整した。ビーム運転時にビームロスが無いことが望ましい。調査の結果から、初段の加速部までのビーム調整が難しいことがわかり、2023年のビーム運転後、最上流部のアライメント調整を行った。加速部以降の平均高さに習うように、電子銃の位置を約1mm下げるように再アライメント行ったので報告する。
産業用X線CT装置は国内外のメーカーから様々な機種が販売されており、工業分野だけでなく生物分野を研究する大学や研究機関においても設置されるようになってきた。国立遺伝学研究所においても2005年に初代X線CT装置が設置され約18年間運用してきた。当研究所では大腸菌からイネ、マウス、ヒトに至る様々な生物を対象に遺伝学に関する研究が進められている。その一方で、メーカーからリリースされるX線CT装置の仕様は様々で、1台の装置ですべての生物材料のニーズに応えることは不可能である。また成果がでなければ装置の維持も難しい。工学物理系の知識に弱い発表者がX線CT装置を使用して生物分野の研究支援をするなかで経験した問題点を考察する。
J-PARC物質生命科学実験施設ミュオン実験装置では、レプトンの一種であるミュオンを生成して様々な実験に利用している。ミュオンは、3 GeVまで加速された陽子と標的材料である等方性黒鉛との核反応によって生成される。この等方性黒鉛は厚さ2cm直径33cmのドーナツ形状であり、4秒に1回転させて陽子ビームの当たる場所を変えることによって放射線損傷を分散させて寿命を延ばしている。この黒鉛や回転システム全体をミュオン生成回転標的と呼んでいる。 講演ではこの標的の開発や運用について発表する。
核融合科学研究所の大型ヘリカル実験装置は、昨年度で重水素実験が終了した。
H29年度の技術研究会ではこの重水素実験のためのITVシステム及びインターロックシステムの構築について報告したが、今回はその後の運用と昨年度までのトラブル事例について報告する。
現在PFリングで運用しているアンジュレータ(以下ID)は様々なギャップ、偏光動作を可能にしており、これらの動作をしても基準軌道から変化しないようにする必要がある。そこで事前に様々なギャップ、偏光動作した際の軌道変動を測定しID前後に設置している補正電磁石を用いてID内の軌道を補正している。その際に適切な補正電流値を設定するために補正データテーブルを作成し、運転時は作成した補正データテーブルを用いてフィードフォワード制御を行う。ここでは補正データテーブル作成プログラム(以下補正データプログラム)の更新作業について報告する。
J-PARC MLFのミュオン生成標的は回転方式の標的を用いている。生成標的は真空のビームダクト内に設置されており、真空内への回転駆動は回転導入器を用いた駆動伝達システムを利用している。標的の回転トルク及び速度の信号データは監視され、異常時の場合は回転及びビームを停止するようにMPSが組み込まれているが、異常を発見しても高放射線環境下においては交換及び修理を即座に行うことは厳しく、作業時間の制限もかかる。そのため、異常の早期発見及び異常個所の特定がより重要である。我々は回転トルク及び回転速度の波形データから、FFT解析により回転導入器のベアリング由来の振動成分が含まれていることを確認し、またこれらの振動成分を信号データの基礎統計量を用いたモニタ開発を行い、長期的なベアリング振動の変化をモニタすることが可能であることが示唆された。
2023年度夏に、低温工学・超電導学会冷凍部会が主催する「低温技術夏合宿」が行われた。本講習は、若手研究者・技術者を対象とし、超伝導や低温技術の理解・技術力の向上を目指すものである。今年度は、液体窒素温度77K付近まで冷却可能な性能を出すことを目標に、パルス管冷凍機を組み立て、運転方法による冷凍性能の変化も見ながら冷凍性能評価試験を実施した。また、蓄冷材の比熱と熱伝導率による冷凍性能の変化にも着目し、蓄冷材をステンレス金網のみの構成と、ステンレス金網とリン青銅金網を混合した構成とでそれぞれ冷凍性能を測定した。本発表では、本講習における小型冷凍機の組立・試験の過程、性能評価試験から得た知見・考察について報告する。
高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、大強度陽⼦ビームを⽤いて10^-16の分岐⽐でミュオンが電⼦に転換する事象を探索するCOMET(COherent Muon to Electron Transition)実験の建設が進行中である。2017年度の技術研究会では、本実験に使用する冷凍機本体の移設整備工事について報告した。その後、電流リードボックス、ミュオン輸送ソレノイド電磁石及びそれらを接続する断熱4重配管を含めた複数のコンポーネントの接続が完了し、冷却試運転及びビーム運転を行った。本報では、その構築時の状況や冷却状況、予冷、クエンチ処理・復旧などのシーケンスについて報告する。