産業科学研究所の機械加工室では2014年にNC縦フライス盤にロータリーテーブル、回転ヘッドを追加した5軸加工機が導入された。5軸加工機では複数面を1度の段取りで加工できるため、再固定や座標系の再測定などで起こる誤差が少なく、精度や生産性を上げることができる。しかしながら年間180件ほど受ける依頼工作は3軸加工で対応できるものやジグを工夫することで加工できるため、扱いが複雑で高度な技術を要する5軸加工は敷居の高さから長らくその機能については使われていなかった。この度、機械工作に関する自分のステップアップとして5軸加工について少しずつ勉強を始め、初歩的な加工を試みた結果と課題点について報告する。
秋田県内の天然生物資源から生物活性物質を探索する研究の一環として、非食用の海藻であるソゾ属の成分探索を実施した。ソゾは、臭素や塩素を含む特異な化合物を生産しており,それらは細胞毒性や抗菌活性等の生物活性を有している。本研究では,成分探索の報告例が少ない秋田県沿岸に生息するソゾを調査した。今回、秋田県にかほ市沿岸にて採集したソゾのメタノール抽出物より新規C15-acetogeninを含む3種類の化合物を単離した。各化合物の立体化学は、各種分光分析(1次元NMR、2次元NMR、IR)及び高分解能ESI-MSで解析し、相対立体配置を推定した。一方、各化合物の生物活性をDPPH抗酸化活性試験,担子菌類を用いた抗菌活性試験等で評価した。本発表では、新規化合物の構造決定及び生物活性試験の結果を報告する。
遅延回路を使用した中性子2次元検出器を動作させるために、遅延回路を模擬したテスト回路と、遅延測定回路の開発を行った。最低でも、2nsの時間分解能で、500ns間を検出できる必要がある。
今までに開発してきている、多入力TDC(DOI 10.1109/TNS.2021.3084144)を応用した。PET開発実験用で、62.5psの時間分解能を持つ128チャンネルのボードである。4チャンネルしか使用しないため、比較的簡単に開発できた。テスト回路は、2ns遅延素子をX軸に119個、Y軸に84個つなげた。それぞれに16点と11点で電荷を供給できるようにし、約3pCの電荷で2次元画像が得られることが確認できた。TDCの原理、遅延回路の原理、測定結果について報告したい。
京都大学桂キャンパス極低温施設には、ヘリウム液化供給システムの複数の被冷却機器の水冷のため、密閉式冷却塔が設置されている。令和5年1月下旬の寒波の際に密閉式冷却塔の複数の部品が凍結破損した。一時的には被冷却機器を運転できない状況に陥ったが、応急措置とその後の修理対応によってヘリウム損失などの重大な問題に発展することなく復旧させることができた。発表では、凍結破損の状況、応急措置と修理対応、今後の対策等について述べる。
本学は、我が国唯一の視覚・聴覚障害者のための高等教育機関です。
国内一小さな国立大学ながら、大変特徴的な本学の概要、本学に在籍する技術職員の業務についてご紹介します。併せて、本学で手話通訳職員として勤務する立場から、令和6年度の科研費(奨励研究)に応募しました。その内容についてもご紹介します。
先端工作技術グループは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)での基礎開発、インハウスでの"ものづくり"を支援するグループとして、2016年に宇宙科学研究所で発足した。当グループは、再使用ロケットRV-Xの筐体の様々な構成部品の製作や緊急離脱接手(QD)の開発、ATRエンジンの開発、国際観測ロケット(DUST)の実験装置開発、超小型月面着陸機(OMOTENASHI)の構成部品製作、SLR用小型リフレクター(Mt.FUJI)の開発、リュウグウ試料用マニピュレータの開発などに携わり、JAXA内外の研究や共同研究へ幅広い研究開発支援を行なっている。当グループで保有している5軸加工機"MAKINO D500"の活用と製作事例について報告を行う。
ニュートリノ生成施設では、30GeVの陽子ビームを炭素標的に照射してニュートリノを発生させ、295km離れた神岡のニュートリノ検出器に打ち込み、ニュートリノ振動を調べている。陽子ビーム強度が約2倍の1.3MWとなる。CERNで開発されたFLUKAモンテカルロシミュレーションプログラムを用い、ニュートリノ生成施設において、エネルギーGeVからmeVにいたる中性子が鉄、コンクリートで遮蔽される様子を計算している。実際の配置を十分考慮した円柱対称のモデルを用いた計算は大変有効であることが分かった。コンクリート遮蔽体の外に置かれた中性子検出器TLDの測定値と比較して、中性子による電子機器のソフトエラーについても考察する。
核融合研究のための高温プラズマ加熱装置として、中性粒子加熱装置がある。当所では本加熱装置に高周波イオン源を適用するための学理的研究を行っている。これに必要なプラズマ放電を励起させるための発振器の仕様は供給電力1.2kW、周波数13.56MHzである。発振器と放電用誘導コイル間にはインピーダンス整合をとるための自動整合器が用いられる。今回この整合器(アステック社製、DH-30-02A)の制御部PICマイコンが破損し、内臓プログラムも消失する故障が発生した。また外注修理も困難であったため当所で行っている修理についての経過を報告する。
内槽が常温となった液体ヘリウム容器は、適切に冷却してやらなければ使用できない。最近予冷した容器についてデータを紹介し、過去の経験も交えて考察する。
毎年夏、機構内の電気設備点検に伴う計画停電時に計算科学センターでサービスを提供している基盤ネットワークやメールなどのような情報基盤サービスが無停止で運用できるよう外部に仮設発電機を接続して給電を行っている。2017年度からはGrid関係の機器についても無停止での運用を行うためUPSを経由して給電を行ってきた。しかし、2020年度秋から当該機器を含む中央計算機システム更新による設置場所と接続先UPSの変更により、外部発電機の容量や設置場所などを検討した結果、給電経路を整備する必要が生じた。経路整備期間中はGridサービスの停止を余儀なくされた。Gridは海外の研究機関が供出する計算資源と協調して運用を行う必要があるため、計算科学センターで運用を行うGrid基幹サービスを停止させないことが望まれる。本発表では、停電期間中でもGrid...
令和5年度、名古屋大学装置開発技術支援室に新たに2名の技術職員が採用されたことにより、「機械系人材の育成」を目的とした新人研修を受講した。本研修では、「装置の設計・製作に要する基礎力の習得」を目標とし、「組織理念の浸透」「基礎知識・技能の習得」「実務に近い実践経験」の3つの教育課程を受講することで目標達成を目指した。主な研修内容としては、汎用旋盤・フライス盤による技能検定2級課題の製作や、TIG溶接による一斗缶傾斜スタンドの製作、打錠金型の熱処理による不具合改善などを実施した。本発表では、新人研修の受講内容および金型改善事例について報告する。
日常のみならず、あらゆる電気機械において制御が用いられている。その制御は紐解いていくと、P:比例I:積分D:微分の要素からなると考えられる。それらをP制御、PI制御の様に、単体もしくは複合して用いていると考えられる。 実験装置について、日々の実験・実習・演習において損傷・失敗・不備を一度もなく続けていく事は難しいが、それらの中で、どのような修理・修繕・補修・工夫があったのか、を述べれればと思います。
筆者らは2021年、電子軌道可視化法の開発を行っている研究者からの依頼で、マイクロチャンネルプレート(MCP)とディレイラインアノードより得られる信号を受けて所定の論理演算を行う多重同時計測回路を開発した。ディレイラインからはランダムな間隔で発生する数ns幅の短いパルスとこのパルスから遅れて発生する1μs幅の長いパルスの組み合わせが出力されており、これにMCPからの信号を加えた13本の信号が回路に入力される。このような一定の規則を持った高速な繰り返し信号処理にはCPLDやFPGAが適している。今回は、市販されている小型FPGAボードを用いてこれら入力信号を模したパルスジェネレータを製作したので報告する。
KEK加速器冷凍機グループでは液体ヘリウムを用いて様々な加速器の超伝導加速空洞の冷却を行っている。これらの冷凍設備の冷却には超伝導液面計が多数使用されている。この超伝導液面計は大気圧の4.2Kの液体ヘリウムや2Kの超流動ヘリウムで使用する場合、比較的安定して動作する。しかし、液体ヘリウムが超流動に相転移する温度である2.17K近傍で値が大きく振れたり、大気圧での液体ヘリウム温度である4.2Kでの使用中に一定の値を表示し続けることがある等の問題が生じる事があり、実験や液面制御に支障が生じ問題となっている。この現象を調査するために、現在再現実験を行っている。今回、その報告を行う。
近年、オープンサイエンスや分野横断的な研究を推進する流れを受けて、研究者が出版社や他の研究室などの外部の人に対してデータを共有・公開する機会が増加している。しかし、一般的なファイル共有サービスは、大容量の計算データのやり取りに用いるには扱えるデータ容量が少ない上、データが長期間保存される保証がない。この課題に対して、当センターではスーパーコンピューター利用者が無料で利用可能な独自の計算データリポジトリサービスを立ち上げることとなった。本発表では、本サービスの要件を満たすソフトウェアの調査・選定や運用方針の決定など、サービス開始に向けて現在までにどのような取り組みを行ってきたか発表する。
令和5年度、装置開発技術支援室に新規採用の2名の技術職員が配属され、研修の企画と推進を担当した。企画側の立場から、研修の狙いから研修メニューの具体化までどのように考え進めていったか、研修を実施した後の振り返りも交えて紹介する。
J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)の崩壊ミュオンビーム輸送系で使用されている四極電磁石(DQ11)およびキッカー電源の冷却水系統に設置されている流量計の故障により、正しい流量が表示されないという事象が発生した。当該流量計が接続されている冷却水系統は、本来ならば流量計の前後にバルブを設けるところ、コストダウンのため流量計上流側のバルブが省略されており、交換が困難な構成となっている。そのような状態で水抜きから水張りまで一連の交換作業を行うためには、如何に排水箇所を局所化し、取り込まれた空気を効率よく取り除くか、手順の工夫が必要であった。本発表では交換手順の詳細に加え、交換作業中に発生したトラブルおよび教訓、流量計故障原因の推測等について報告を行う。
分子科学研究所の熊谷崇准教授の研究グループは、近接場光とAFM(原子間力顕微鏡)を融合したナノ顕微分光システムの開発を進めている。2023年からは超高真空と低温環境も融合した近接場顕微分光システムの開発が始まり、筆者はこのシステム用の測定器・制御機器の開発に携わっている。すべてアナログ回路のみで構成するこれらの機器開発に際して遭遇したトラブルと対策の事例を報告し、アナログ回路開発のノウハウを共有・議論する機会としたい。
液体ヘリウム貯槽の液体ヘリウムを容器に小分けする(=汲み出しする)際は、液体ヘリウム貯槽から伸びているトランスファーチューブを容器に挿入する。これまでは、液体ヘリウムを容器に小分けする際、トランスファーチューブを可能な限り奥まで挿していた。しかし、本当に奥まで挿す必要があるのか、必要な深さについて検討したデータはあまり見られていない。そこで、容器にトランスファーチューブを挿入する際に必要な深さについて、日常的に汲み出し業務を行うと同時に検討を重ねた。本発表では、その検討内容や結果などを報告する。
顕微鏡映像ではカメラの振動が拡大され、撮像では大きなブレとして現れる問題が生じる。そこで撮影後にプログラムによってカメラブレを補正するソフトウェアを開発した。当該ソフトウェアでは、ブロックマッチング法を用いてブレ量を推定し、さらに小数画素精度のブレをパラボラマッチング法で推定する手法を採用している。実装はプログラミング言語の Python によって作成した。実際に開発ソフトウェアを用いて気道上皮線毛の高フレームレート顕微鏡映像に対してカメラブレ補正を行い、線毛運動周波数をより正確に測定可能となることを検証し、ソフトウェアの有用性を確認した。
採用後三年目までの期間で行った、様々な実験装置の設計や工作機械を用いた製作について発表する。
これまでにフライス盤や旋盤、ボール盤や溶接、ワイヤーカット放電加工機等の工作機械を用いて、アルミ合金やステンレス合金、銅合金やニオブ材料といった様々な材料を実際に加工し加工条件や加工方法などの技術を習得した。
機械加工では材料の種類や厚さによって、加工条件等や加工方法を検討しないと加工が困難で危険を伴う作業がたくさんある。汎用機械からマシニングセンターを用いた加工について様々な製造依頼を通して感じた、機械加工を行う際の工夫点や注意点等を紹介する。また、製造依頼での経験を活かして製作した自由落下装置についても紹介する。
KEK機械工学センターでは真空炉を使用して熱処理やろう付けを行うことができる。大気炉でこれらの処理を行った場合、処理品に酸化膜が付着し外観も汚れるため、性能を発揮できなくなる場合もある。真空環境では酸素も炭素も存在しないため、美しい外観のまま処理を行うことが可能である。最高で1000℃程度での使用が可能であり、炉内の大きさは300x300x400mm、真空排気には油拡散ポンプを使用している。処理する主な材質はニオブ、銅、アルミ、ステンレス、チタンなどである。本発表では2018年度から2023年度までに行った熱処理やろう付けについて報告する。
J-PARCハドロン実験施設では、2次粒子生成標的として1次陽子ビーム強度100kW以上の大強度ビームに対応した回転円盤型標的の開発を進めている。円盤形状の標的を回転させることにより熱負荷を円周方向に分散させることで、より大強度のビームを受けられるようにするものである。より冷却能力を高めるために円盤の形状をフィン型にしている。回転円盤型標的の開発を進めるにあたって冷却方法が問題となる。ヘリウムガスを吹き付けることによる直接冷却式を検討しているが、直接水冷式と比べると冷却能力(熱伝達率)は落ちてしまう。熱伝達率は理論的な算出が困難であるため実験による計測が必要となる。そこで、冷却能力を評価するための実機形状を模擬した装置を構築し、データの測定を進めている。本発表では、回転円盤における熱伝達率の測定結果について報告する。
「装置の管理」 私はSQUID磁化測定装置 MPMS、熱分析装置TG-DTA/DSC、粉末XRDを主に管理しています。日常的な業務としては装置への寒剤の供給、ユーザー対応があります。その他に標準試料を用いた装置の温度、磁場のチェックを行っており、XRD装置の温度加熱ユニットでは表示温度と試料温度の校正表を作成しました。また、最近はマニュアルのビジュアル化を進めています。 「小物作成」 装置周辺の試料準備時に便利そうな小物やメーカーから買うと高額なものを作成しています。3D CADでデザインして所内の3Dプリンターで出力しています。上記2点について、当日は実物や写真を示して、工夫点などを交えて発表する予定です。
分子研UVSORの光源開発用ビームラインBL1Uは、放射光施設としては珍しい加速器グループより開発運営を行っている。技術職員側では、このビームラインの光学系の設計やチャンバーの設計・設置、維持を行っている。また、真空紫外光を利用するユーザー支援の一環として、実験計画や実験条件の構築に参加し、放射光利用が初めてユーザーでも比較的障壁を低くすることで参入をしやすくしている。今回は、BL1Uでの開発の現状とユーザー支援の実例を含めて業務の現状について報告する。
「かがくのおもちゃ箱」は、1997年から長岡技術科学大学の教員・技術職員と学生ボランティアが中心となり毎年開催している理科実験教室である。2023年度から化学に留まらず生物学・物理学も含む自然科学に関わる題材を提供することを目指し、名称を「化学」から「かがく」へと改めた。そこで、本年度は学部1年生物学生実験のテーマの一つである「プラナリアの再生」を題材に、未就学児~小学校中学年向けにアレンジした生き物を扱う新しいテーマを立ち上げた。本発表では、新テーマの実験内容や対象年齢を下げるうえでの工夫、得られた知見などを報告する。
京都大学複合原子力科学研究所電子線型加速器施設(ライナック)は、設置から約60年経過した国内で稼働する線型加速器で最も古い装置である。大電流でエネルギー可変範囲の広いビームを供給できる等のユニークな特徴から、これまで共同利用・共同研究拠点の装置として多種多様な利用が行われてきた。コロナ禍前の2019年度までは運転時間が年間約2500時間に上り、来年度以降はその水準に回復することが予想される。このように今後も活発な利用が見込まれる点を評価され、複数の大規模な改修を行うことができた。本発表では、ライナックの特徴と利用に関する紹介、改修の一つである加速器制御系と配線更新の際に起きたトラブル対応について報告する。
我々大学等の技術職員の主たる業務の一つは、学生達の教育及び研究活動に係る支援であり、中でも化学分析機器による実験及び測定の補助業務が大きな割合を占めるという職員は多いと推定される。しかし、各種分析機器の取り扱い頻度は当然ながら各々の職場環境によって差があり、そのため類似の専攻を持つ職員同士であっても同一機器の習熟度に大きな差が生じることも起こり得る。そこで発表者らは、学内で実施されている技術部特別研修へ応募し、これに係る研究活動を通して分析機器の取り扱いについて互いに教示し合うことにより、職員相互の知識及び技術の向上に努めている。ここでは実際に研修で取り扱った分析機器及び取り組んだテーマについて紹介する。
将来の核融合炉では、炉壁に入る熱を如何に制御するかが核融合工学上、最も重要な課題のひとつとなっている。なかでも炉壁材料として、高融点材料のタングステンと高熱伝導材料の銅合金の接合材料が有力視されているが、熱膨張率の大きく異なる材料の接合は極めて難しい。核融合科学研究所では、技術部が中心となり、本接合技術の開発に取り組む中でプラズマ放電による接合技術を確立し、従来手法より接合強度を大幅に向上させることに成功した。その後、本技術を用いて炉壁試験体を製作、プラズマ実験に供し、核融合研究の進展に貢献することができた。本講演では、本接合技術開発の取り組みおよび核融合実験装置への応用展開について紹介する。
植物性の繊維を混ぜ合わせたコンクリートで考えられる性質のひとつとして、保水効果がある。その性質を利用し地表面温度の低減効果を狙い、歩道用コンクリートブロックとして用いることを検討したいと考えた。そこで、複数の試験体を同時に同条件で測定する方法を考えた。本稿では、その試験方法および赤外線放射温度計を用いてコンクリート表面の温度変化を計測した結果の一例を紹介する。試験結果として、歩道用コンクリートブロックの地表面温度の低減効果を一定程度確認できた。また、試験体表面温度を測定する上で、赤外線放射温度計とサーモグラフィカメラの使い分けが必要になることが把握できた。
風洞実験をはじめとする流体計測では流速や力、渦、乱れ、騒音などを評価する必要があるため、多数の計測機器を用いる。それらの計測機を複数台用いることや異なる計測機同士を連動させ、多点同時計測を行うことは流れ場の評価を行う上で非常に有効である。本報ではグラフィカルシステム開発ソフトウエアを用いた流体計測システムの開発と、実際に大型風洞装置によって実施された計測器制御と多点同時計測を伴う各種実験へ利活用した事例を紹介するとともにシステム構築における工夫や留意点をまとめる。
近年、フォトンファクトリーではより安定した実験装置運用の為、実験室内の環境データ(空調、装置の冷却水、圧搾空気の圧力、ビームライン真空値等)の監視及び記録に関する需要が高まっている。これらの環境データ取得には、点在する多種多様なセンサーのアナログ出力をデジタル化し収集する必要があり、アナログ入力やリモート制御の機能を比較的安価に実現できる、コンテック社製のリモートI/O CONPROSYS nanoを採用した。今回は、このリモートI/OをSTARSを介して制御する、汎用的なクライアントの開発とその活用について紹介する。
2021年から23年度にかけて液体窒素自動供給装置を更新した。データ集約用のサーバーPCも更新し様々な作業が可能になったため、充填中の様子を記録してみた。液体窒素CEから大型可搬式容器に液体窒素を充填する際、最終的に移送速度は一定に安定する。液体窒素ローリーからCEに充填した直後は、この移送速度の安定値が1.5倍程度に跳ね上がり、その効果が数日ほど続くことがわかった。ポスター発表では、この液体窒素移送速度ブースター効果について報告する。
2023年5月末から、初プラズマ着火を目指して超伝導トカマク装置JT-60SAの統合コミッショニングを再開した。プラズマ着火に必要な真空を得るためには真空容器内壁を洗浄する必要がある。そこで、真空容器二重壁間に高温の窒素ガスを循環させることで内壁を約200℃に昇温して水分を始めとする内壁からのガス放出を促進する200℃ベーキング、真空容器内壁をカソードとしてグロー放電を起こすことで内壁の不純物を叩き出すグロー放電洗浄(GDC)によって不純物の低減を図った。これらの処理による真空容器内のガス種の変化について、四極子形質量分析計(QMS)を用いて真空容器内の残留ガス及び真空容器から排出されたガスの分析を実施したので報告する。
2022年度まで電力単価が上昇しており、2023年度当初の単価が維持された場合、計算科学研究センターの電気代予算を超過することが確実であった。スパコンの消費電力を減らす必要があったが、具体的な方策には様々なものが考えられた。運用ノード数は減らさない方針が示されたため、CPUのクロックをどれくらい落とすかがポイントとなった。その判断材料として、CPUの動作モードを変えて分子動力学計算の計算時間とノードの消費電力を調べた。 その後、計算に使われているCPUのコア数-GPU数と消費電力の関係の可視化と月間消費電力量の予測を行なえるようにしたが、様々な要因により消費電力に揺らぎが生じていることも紹介する。
東北大学電子光理学研究センター(ELPH)シンクロトロン加速器の偏向電磁石内に設置した光子標識化装置の開発過程を報告する。本装置は、原子核物理実験で使用する制動放射γ線のエネルギーと発生タイミングを測定するため、γ線を放出した反跳電子の軌道上に、プラスチックシンチレータと半導体光センターで構成した検出器135台を配置したものである。電磁石中に設置するため、コンパクトに設計し、筐体は非磁性材料で構成した。また、この筐体は設計上の工夫により3分割とし、容易に電磁石内外へ挿入と退避ができる可動式とした。実験時以外は電磁石外で待機することで放射線暴露による半導体センサーの損傷が軽減し、装置の長寿命化に貢献した。
弘前大学理工学研究科では、学科や研究室ごとに3Dプリンタが導入・利用されており、製作物は実験装置部材から加工治具、センサーケース等多岐にわたる。2021年度末に、工作センターへ共通機器として3Dプリンタを導入した。機器担当者の装置習熟と、研究科内への機器利用アピール目的のため、HIRODAIスタンドを制作し、学内行事への展示を行い研究科広報活動へ協力をした。製作物は早期に配布終了するなど好評を得た。本稿では、22年度から23年度の学内行事にて行った取り組みを紹介する。
本発表では、自然科学研究機構のミッション実現戦略事業におけるバイオマス活性炭の開発および技術職員の取り組みについて紹介する。本事業では、核融合研究で開発した技術を応用し、かつSDGsへの貢献を志向しており、未利用バイオマスを原料とした高機能活性炭の創製を研究開発テーマとしている。特に本開発は技術職員が主体となり、各人が担当のテーマを設定し、自主的に学びながら課題解決に取り組んでいる。これまで開発環境の整備と並行して開発を進め、そこで得られた成果を国内外の学会で発表した他、特許出願も2件達成した。さらに他機関との連携も積極的に進めており、国内の民間企業や海外の大学・研究機関との共同研究にも発展している。
放射光実験施設では、より精密に制御された微小サイズの放射光ビームが求められている。このような微小ビームを利用した実験では、今まで以上に環境変動の影響を受けやすくなるため、温湿度や冷却水流量といった環境データの需要が高まっている。今回、実験ホール内の環境データの測定と収集を行うシステムを一新し、Webブラウザ上でデータの確認が可能となる環境モニターシステムを構築した。これにより全体の環境情報の把握が容易になり、得られたデータは空調機の調整など施設整備へのフィードバックに役立てられている。本発表では環境モニターシステムの概要と環境データの活用方法を紹介する。
核融合科学研究所(NIFS)では2017年3月の重水素実験の開始に伴い、管理区域が新たに設定された。同時期より、管理区域内の清掃を目的に、管理区域内の9つのエリアにおいて掃除用ロボットの運用を開始した。NIFSでは月例の作業環境測定により、管理区域内の各作業場所に汚染がないことを確認している。本研究では、管理区域内床表面の汚染状況を確認するため、掃除用ロボットが回収した 粉塵を試料として取り扱い、汚染監視を試みた。研究会では掃除用ロボットが回収した粉塵を用いた測定手法及び結果について報告する。
KEK超伝導高周波試験施設(STF)は、2022年は超伝導加速空洞の入れ替え作業を行い、ILC実現のために同高加速電解による加速実証を行っている。ビームパワーを5倍の5.8mAに増強して運転が行われた。約700usのパルスをビーム品質を保ってビームダンプまで輸送するためには、ビームラインのアライメントも重要である。主加速部に合わせて電磁石やビームモニター系も精密に調整した。ビーム運転時にビームロスが無いことが望ましい。調査の結果から、初段の加速部までのビーム調整が難しいことがわかり、2023年のビーム運転後、最上流部のアライメント調整を行った。加速部以降の平均高さに習うように、電子銃の位置を約1mm下げるように再アライメント行ったので報告する。
産業用X線CT装置は国内外のメーカーから様々な機種が販売されており、工業分野だけでなく生物分野を研究する大学や研究機関においても設置されるようになってきた。国立遺伝学研究所においても2005年に初代X線CT装置が設置され約18年間運用してきた。当研究所では大腸菌からイネ、マウス、ヒトに至る様々な生物を対象に遺伝学に関する研究が進められている。その一方で、メーカーからリリースされるX線CT装置の仕様は様々で、1台の装置ですべての生物材料のニーズに応えることは不可能である。また成果がでなければ装置の維持も難しい。工学物理系の知識に弱い発表者がX線CT装置を使用して生物分野の研究支援をするなかで経験した問題点を考察する。
J-PARC物質生命科学実験施設ミュオン実験装置では、レプトンの一種であるミュオンを生成して様々な実験に利用している。ミュオンは、3 GeVまで加速された陽子と標的材料である等方性黒鉛との核反応によって生成される。この等方性黒鉛は厚さ2cm直径33cmのドーナツ形状であり、4秒に1回転させて陽子ビームの当たる場所を変えることによって放射線損傷を分散させて寿命を延ばしている。この黒鉛や回転システム全体をミュオン生成回転標的と呼んでいる。 講演ではこの標的の開発や運用について発表する。
核融合科学研究所の大型ヘリカル実験装置は、昨年度で重水素実験が終了した。
H29年度の技術研究会ではこの重水素実験のためのITVシステム及びインターロックシステムの構築について報告したが、今回はその後の運用と昨年度までのトラブル事例について報告する。
現在PFリングで運用しているアンジュレータ(以下ID)は様々なギャップ、偏光動作を可能にしており、これらの動作をしても基準軌道から変化しないようにする必要がある。そこで事前に様々なギャップ、偏光動作した際の軌道変動を測定しID前後に設置している補正電磁石を用いてID内の軌道を補正している。その際に適切な補正電流値を設定するために補正データテーブルを作成し、運転時は作成した補正データテーブルを用いてフィードフォワード制御を行う。ここでは補正データテーブル作成プログラム(以下補正データプログラム)の更新作業について報告する。
J-PARC MLFのミュオン生成標的は回転方式の標的を用いている。生成標的は真空のビームダクト内に設置されており、真空内への回転駆動は回転導入器を用いた駆動伝達システムを利用している。標的の回転トルク及び速度の信号データは監視され、異常時の場合は回転及びビームを停止するようにMPSが組み込まれているが、異常を発見しても高放射線環境下においては交換及び修理を即座に行うことは厳しく、作業時間の制限もかかる。そのため、異常の早期発見及び異常個所の特定がより重要である。我々は回転トルク及び回転速度の波形データから、FFT解析により回転導入器のベアリング由来の振動成分が含まれていることを確認し、またこれらの振動成分を信号データの基礎統計量を用いたモニタ開発を行い、長期的なベアリング振動の変化をモニタすることが可能であることが示唆された。
2023年度夏に、低温工学・超電導学会冷凍部会が主催する「低温技術夏合宿」が行われた。本講習は、若手研究者・技術者を対象とし、超伝導や低温技術の理解・技術力の向上を目指すものである。今年度は、液体窒素温度77K付近まで冷却可能な性能を出すことを目標に、パルス管冷凍機を組み立て、運転方法による冷凍性能の変化も見ながら冷凍性能評価試験を実施した。また、蓄冷材の比熱と熱伝導率による冷凍性能の変化にも着目し、蓄冷材をステンレス金網のみの構成と、ステンレス金網とリン青銅金網を混合した構成とでそれぞれ冷凍性能を測定した。本発表では、本講習における小型冷凍機の組立・試験の過程、性能評価試験から得た知見・考察について報告する。
高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、大強度陽⼦ビームを⽤いて10^-16の分岐⽐でミュオンが電⼦に転換する事象を探索するCOMET(COherent Muon to Electron Transition)実験の建設が進行中である。2017年度の技術研究会では、本実験に使用する冷凍機本体の移設整備工事について報告した。その後、電流リードボックス、ミュオン輸送ソレノイド電磁石及びそれらを接続する断熱4重配管を含めた複数のコンポーネントの接続が完了し、冷却試運転及びビーム運転を行った。本報では、その構築時の状況や冷却状況、予冷、クエンチ処理・復旧などのシーケンスについて報告する。
東北大学大学院理学研究科地学専攻では、岩石、鉱物や隕石などの薄片、研磨片の作製を行っている。従来、薄片や研磨片を作製する際には研磨材と水や油などの潤滑剤を使用した方法が用いられていたが、耐水研磨紙を使用した乾式研磨が行われるようになった。しかし乾式研磨法は、従来の方法に比べるとはるかに難易度は高く簡単に技術を習得することは難しい。今回、金属製の治具を使用することにより、耐水研磨紙を使用した研磨が手軽に行えるようになったので、その研磨方法と金属製治具を紹介する。
超冷中性子は超低エネルギーの中性子で、原子核から取り出した中性子を冷却することによって生成します。効率的に超冷中性子を生成するためには超流動ヘリウムを1.0 K程度の極低温に冷やし続ける必要があります。今回の熱交換器は超流動ヘリウムと冷媒となる液体ヘリウム3の間の熱交換器で、円筒型の熱交換器の内側に超流動ヘリウム、上部のフィン部に液体ヘリウム3が入る。上部フィン部の加工は機械工学センターのワイヤーカットマシンを用いることで予算の節約と納期短縮に貢献した。今回の発表では、熱交換器の設計と工程管理、フィン部の加工について説明を行う。
屋外の電源の無いフィールドにおける環境トリチウム濃度測定を行う目的で、移動可能な水蒸気状トリチウム捕集装置の開発を福島大学 環境放射能研究所と核融合科学研究所で実施した。 電源の無いフィールドでの使用となるため、ポータブル電源の使用や電力消費を如何に抑えるかなどを考え各部品の選定を行いコンパクトでありながらサンプル数を増やす工夫なども行った。プログラマブルロジックコントローラー(PLC)による無人運転制御も可能にした装置を製作したので報告する
大強度陽子加速器施設J-PARCリニアックでは、負水素イオンビームを400MeVまで加速している。リニアックはイオン源及び4種類の加速空洞と電磁石で構成されており、加速空洞の種類はビーム速度の低い領域から順に高周波四重極線型加速器(RFQ)、ドリフトチューブ型線型加速器(DTL)、機能分離型加速器(SDTL)、環状結合型線形加速器(ACS)を採用している。東日本大震災から復旧後に一部のSDTLで運転電力付近での電力投入が反射の増大により正常にできない事象が発生した。空洞内表面を有機溶剤または希塩酸を用いて手作業で洗浄することにより問題を解決するに至った。本稿では2021年および2022年に行った希塩酸による酸洗浄の手法について報告する。
本学工学部実習工場では、学内の各研究室(工学部機械工学・システムデザイン学科以外も含む)等からの実験装置及びその部品・要素についての金属の切削加工を中心とした試作依頼の業務を行っている。本試作における部品の材質はステンレスおよび純銅であり、産業界で多用されている鉄鋼やアルミニウム等と比較するといずれもいわゆる難削材に分類される材料で、うまく加工するための条件が比較的シビアであり、熟練を要するものである。本発表では、本年度試作依頼のあった極低温電気特性測定装置部品に関する試作の工程について、失敗談やそこからのリカバリーなどの本学工場の持つ加工ノウハウについての話題を中心に報告する。
KEKが実験に携わっているPOLARBEAR望遠鏡では、高感度なCMB観測を実現するために、パルス管冷凍機などの冷却技術を用いて検出器を1 K以下まで冷やして運用している。しかし、冷凍機の冷媒であるヘリウムの循環に起因する低周波振動(~10 μm 1.5 Hz程度)はノイズとして観測に影響を及ぼしており、パッシブな除振を行うことは難しく大きな問題となっている。この問題に対して、素核研メカグループ、CMBグループ、台湾の重力波実験グループとで協力して振動をアクティブに除振する装置のR&Dを行っている。また、昨年度の分子科学研究所技術研究会ではこれらの開発状況を報告した。本報告では、そこからの進捗状況や今後の開発計画について報告する。
SuperKEKB加速器においてビームゲート(BG)システムは、電子銃、入射キッカー等のビーム入射時に動作する機器へのトリガー配信を制御(開始/停止)するシステムである。BG信号は加速器運転システムだけでなく安全システムにも従い決定される。安全システムの要請で確実にビームを止めるため、BG信号線は電子銃に直接的に配線され入射の停止が行われている。一方その他の入射時に働く機器は、加速器運転システムの要請により正確な順序で開始/停止させるため、タイミング制御を司るイベントシステムを介して制御されている。この異なる制御機構の併用により、キッカー等の入射機器には一回の空打ち(入射器からのビームが無い状態での動作)を許容している。空打ちの悪影響を抑えるため、White Rabbitを用いてBGシステムの開発を行った。
JT-60本体開発グループ 大型超伝導トカマク装置JT-60SAは初プラズマの点火を目指し、2023年5月から統合コミッショニングを再開した。プラズマ中に不純物が混入すると放射損失の増大によりプラズマ温度の低下や燃料ガスの希釈が起きてしまうため、プラズマ点火の前に壁洗浄をする必要がある。JT-60SAの真空容器にはグロー放電洗浄(GDC)の電極がトロイダル方向に3台設置されており、真空容器を陰極とした直流グロー放電により、花弁付着している不純物を除去する。水素GDCとヘリウムGDCを実施したので、放電特性と洗浄効果について報告する。
本年度分子科学研究所では、研究教育に関わる機関に所属する技術者に対して技術情報の共有・蓄積および交流の場を提供することを目的とする「技術情報共有サイト」を立ち上げた。本サイトはRocky Linux9上にDiscourseを構築して運用しており、発表者が構築や保守等の作業を行っている。
今回の発表ではDiscourseのインストールと設定を中心に、Discourseから送信されるメールをGmailの「メール送信者のガイドライン」に対応するためDIKM、DMARC、ARCに対応したことや、SELinuxの問題によりDiscourseが立ち上がらなくなったことへの対処等を報告する。
無酸素銅はその特性から実験装置には欠かせない素材である。一方で、他の金属素材に比べ柔らかく、さらに切りくず処理が難しい。本発表では学生への卒業研究指導等で得られた知見を紹介する。
現在建設が進んでいるハイパーカミオカンデ計画では、東海村J-PARCに近接する場所に前置水チェレンコフ検出器の建設計画が進んでいる。この検出器は直径10m、深さ40mの縦穴を掘り、そこに直径9m、長さ12mの検出器を設置して実験を行なう予定である。縦長40mの検出器の上下移動のためには縦穴に水を注入してその浮力でガイドレールに沿って移動をおこなう。設計では地震が起きたときの耐震性の検討及びそのための上下機構の設計がおこなわれている。また、簡単な基礎振動試験も行われた。報告では一連の検討状況及び基礎振動試験結果について報告する。
2019年までのKEK一般公開では、SuperKEKB加速器において見学者数の計数を機械式数取器で行っていた。2023年の一般公開では新たな試みとして、見学ルート入口と出口でそれぞれ異なる電子的な計数システムを新たに製作し導入した。入口においてはボタン押下による電子的な手動計数、出口においては画像処理による自動計数を導入し、それぞれの計数結果はEPICSでリアルタイムに共有されるようにした。これら二つのシステムの製作と運用結果、来年以降へ向けた課題と展望について紹介する。
SuperKEKB加速器ビーム最終集束用超伝導電磁石システム(QCS)用、BelleⅡ検出器超伝導ソレノイド用ヘリウム冷却システムは、TRISTAN加速器ビーム衝突実験超伝導4極電磁石冷却用に1989年建設された機器を改造し使用している。ヘリウム冷凍システムの運転時間は13万時間を超えている。特に機械的な回転部を有するヘリウム圧縮機システムは全体的なオーバーホールを計画しており、その一環として2023年にヘリウム圧縮機の動力源である電動機の整備を行った。今回この報告とオーバーホール全体計画について報告をする。
Kubernetes(クーバネテス)とは、ギリシャ語に由来し舵取りや操縦士を意味し先頭の「K」と語尾の「s」間が8文字を数え「K8s」と略され、コンテナ化したアプリケーションのデプロイ、スケーリング、および管理するオープンソースである。本発表では、従来のハイパーバイザー型仮想環境との比較やKubernetes基盤のメリットやデメリットを説明し、ファイアウォールで検知される脅威やURLフィルタのログを収集し、分析環境の構築とそのログ監視運用について紹介する。
本研究は、騒音職場の労働環境改善を目指し、切削加工音に倍音を加えて心地よい音色を創出する新たな手法を提案する。厚労省のガイドラインに従い、騒音障害防止対策が必要とされている一方で、騒音職場は若年就労者から敬遠され、人材の確保が課題となっている。そこで、騒音を心地よい音色に変換し、心理的ストレスを軽減することを目指す。これは、労働環境の改善と労働者の心理的負担の軽減に寄与する可能性があり。騒音問題に対する新たな視点を提供する。
J-PARCメインリングのビーム入射時の周回ビームの診断のために、6桁のダイナミックレンジを持つ2次元ビーム形状モニターを開発中である。テストベンチの試験で、ビームが測定光学系を格納した真空容器を通過することを模擬した実験において有意な高周波共振が発生することが分かった。そして、この共振がビームから見たカップリングインピーダンスを増大させ、大強度ビームの不安定性を誘発することが懸念された。その対策として電磁波吸収体である炭化珪素SiCとフェライトを挿入することで、共振を十分に低減する効果を確認した。現在はこれら吸収体を実機への取り付けるための部品の構造設計と製作を進めている。また吸収体の発熱を真空チャンバー外へ放熱させるための構造の設計と、その評価試験を行っている。本発表ではこれらの現状について報告する。
SuperKEKBの真空コンポーネントや制御システムは、アップグレードによる負荷の増加を受け入れなければならず、試運転の際には10年以上先の健全性を維持しなければならない。しかし、システムの入力点数や出力点数が多く、TRISTANやKEKBの運転時から使用している機器をすべて新しいものに置き換えることは、予算の制約もあり困難であった。SuperKEKBでは、TRISTANやKEKBで使用していた装置の再利用を優先し、古くなった装置の更新を行いました。SuperKEKBの真空システムは8年間稼動している。この間、真空制御システムには多くのトラブルが発生したが、運転が致命的に停止するような事態には至っていない。
ヘリウムはすべての元素の中で最低の沸点を持つため、寒剤として広く利用されているが、近年では価格が高騰している。本学では、極低温の液化ヘリウムを寒剤として使用したのち、ガスを回収して再液化するリサイクルを行うことで安価に供給している。ガスの保管量には限りがあり、液化が滞れば数週間であふれてしまう。そうなれば在庫があっても供給停止せざるを得ないため、液化設備の保守点検は重要である。東工大大岡山キャンパスの液化用圧縮機はKAESER社製DSDX302で、2011年3月に導入された。運転時間が8000時間を超えたため、メーカーの推奨する各種部品の点検・交換を行ったので、これについて発表する。
分子科学研究所内では、現在 LDAPとWebDAV を組み合わせたファイル共有システムを運用している。しかし、接続が安定しない等このシステムに対してユーザーから若干の不満が上がっている。これに対し、LDAPに連携させる形でSamba を立ち上げ、導入コストを抑えながら、ユーザーフレンドリーかつ接続の安定したファイル共有システムを構築しようと試みた。結果的に実現には至らなかったものの、LDAP-Samba間通信の暗号化やユーザーアクセスの制御、ボリュームシャドウコピーサービスの実装等、両ソフトの運用について様々な知見が得られた。今回の報告では、導入の背景にも触れつつ、それらの知見を共有する。
東海国立大学機構名古屋大学全学技術センター装置開発技術支援室ではガラス加工を通して研究支援業務を行っている。主な業務内容は既製品ガラス器具の修理・改良、およびガラス器具の新規作製である。研究者に継続的に安定したガラス加工サービスを提供するためには日々の業務のなかで自己の技術向上に努めるのはもちろんのこと、後輩職員の技術向上を促すことが重要になってくる。本発表では、加工技術向上と育成について日々の業務の中で行ってきた様々な取組みについて報告する。
核融合科学研究所では、放射線管理区域内で作業を行う際には、放射線による汚染拡大を防止するために専用の作業着を着用することが決まりとなっています。作業が終了したらその作業着を脱ぎ、管理区域から退出します。管理区域内作業着は、作業者が一目で識別できるように、赤・緑・黄色の派手な色を使用しています。しかし、作業者が誤って作業着を着用したまま退出する事例が多発しました。そのため、退出ゲートにカメラを設置し、管理区域内作業着を着用したまま退出しようとした場合に色検知により警告するシステムを開発し、運用してきました。本報告では、そのシステムについて詳しく説明します。
福井大学文京地区において、磁気式入退室管理システムは老朽化による故障が増えているが、製造元が撤退しており修理不可、さらにICカード式の後継機はとても高額で課題となっていた。技術部長から要請があり、技術部でICカード式入退室管理システムを設計開発することになり、その経緯とシステム概要、設置・運用・展開状況について報告する
LHC磁石実験を行うために、ヘリウムガスを回収するガスバッグを増設する必要がありましたので、その事についての発表となります。
今年度、金沢大学事務用情報システムの更改を実施した。新システムでは、前システムで導入したリモートデスクトップを用いたシンクライアント方式を継承しながら、パフォーマンスなどの問題点の解決を図り、新しい利用スタイルを提唱した。本発表では、このような新システムのコンセプトやその実装について紹介する。
大強度陽子加速器施設(J-PARC)における放射線管理で管理方法に近年変更が生じた件について、変更の経緯・変更内容・行われた後述の検討について述べる。
- 使用している線量計を変更する必要があったため、個人識別子との一体運用法などについて検討を行った件
- 初期教育訓練を行うための調書について、申請側が記載事項を漏れなく書きやすくなる改訂
- 管理区域内作業の保護具等指示に関する作業確認依頼書提出に関する改善を行った件
J-PARCのMLFには、ミュオンを利用した物性実験を行う実験エリアが、現在9エリア存在する。これらの実験エリアにミュオンを照射し各種実験を行う際には、放射線防護のためにビーム照射中には実験者が実験エリアに立ち入らないような、防護機構が必要になる。これらの防護機構をPPS(Personnel Protection System)と呼称する。
本発表では、ミュオン実験エリアのPPSの構成を紹介させていただくと共に、最近ミュオン科学研究系で建造された、H1,H2実験エリアのPPSの説明をさせていただきます。
学生のバルブ操作ミスにより回収ヘリウムガスに大量の空気が混入してしまい、ヘリウム液化運転が不調に陥るトラブルがあった。この件がきっかけとなり液化運転および運用方法を考察する機会になったので報告する。①液化速度の調整:高圧ラインの運転圧(HP圧)を操作する事で精製と液化のバランスを変化させることが出来、これに伴い液化速度も変化する事がわかった。②手動で再生移行:液化運転中に任意のタイミングで再生へ移行させる方法を見出した。③中圧タンク圧の維持:小型容器への液体ヘリウム汲み出し時に貯槽を加圧する事で消費しているが、加圧頻度の見直しを行った。以上の事項について報告する。
核融合研科学研究所では、2017年度からMicrosoft社との間で教育機関向け包括ライセンス契約を締結し管理・運用を行ってきた。ライセンス形態は当初のOVS-ESからEESに代わり、現在のCSPに至っている。本発表では、これらライセンスごとの運用方法の違い、これまで実施してきたユーザ対応、トラブル事例などについて紹介する。一方、核融合科学研究所ではグループウェア「サイボウズ」も並行して運用しているが、オンプレミス版(Linux)のサポート終了に伴い、これまで利用してきた研究所内でのドキュメント共有と設備予約機能をMicrosoft環境に移行することを計画している。この概要についても合わせて報告する。
めっき技術は、古くて新しい技術とよく言われる。その起源は、紀元前1500年頃のメソポタミア文明で使われた溶融すずめっきにまでさかのぼり、現代でも様々な分野の産業で利用されている。近年発展目覚ましいIT産業にもめっき技術は不可欠である。しかし、これだけ幅広く重要な技術でありながら、めっき技術そのものことはあまりよく理解されていないように思われる。そこで、発表者がこれまでに業務で製作してきた研究用部品の事例を交えながら、めっき技術について紹介していく。
研究所の技術業務には様々な”問題”が生じます。個人的な経験談になるかもしれませんが、研究所の技術スタッフとしてどのように立ち向かうかとか話してみます。
加速器を用いた素粒子実験においてはビーム強度増強が世界的な競争になっている一方で、大強度ビームで発生する放射線もますます強くなり、放射線環境下での機器のモニタリングはますます困難になっている。なぜならば高放射線環境下では半導体機器はもちろん、部品に有機物を使った機器はことごとく動作不良を起こしてしまうからである。機器監視にメジャーな光学カメラや赤外線カメラなどは使用できず、高放射線環境下ではもっぱら熱電対などの無機材料のみで製作できる素子のみに頼って機器監視を行うしかないというのが現状である。J-PARCハドロン実験施設でも高強度ビームに対応できる回転型の粒子生成標的を開発中であるが、その監視手法が課題である。本発表では高放射線環境下で動作可能な数少ない測定器だけで回転標的を監視する手法について紹介する。
世界的なヘリウム危機のために、全量を輸入に頼る日本では、ヘリウムの入手が困難な状況が続いている。にも拘らず、その特異な物性のため特に低温分野においてヘリウムの代替物質は無い。多くの研究教育機関では液体ヘリウムの安定供給のために液体ヘリウムリサイクル設備の運用や維持管理が行われている。ヘリウムの漏洩は、高圧ガスの事故に該当するのみならず、液体ヘリウムの安定供給に支障を来たすため、漏洩防止に細心の注意を払うことが必要となる。ヘリウムの漏洩には振動や温度など様々な原因があり、各々の原因に応じた適切な対策が必要となる。この漏洩の問題に対して、これまで実施してきた対策や、現在検討している対策について発表する。
世界中のあらゆる業界でDXの取り組みが加速しています。東京工業大学でも様々なDXが進んでおり、そのいくつかのDXを支援する業務を行っています。その中で共通して必要なことや課題も見えてきています。現在の取り組みから、DXを構築する前に必要な準備から、プロジェクトを進める上での注意点、問題の発生を減らすための運用方法などをみなさまのDX推進の一助になればと思い共有します。
また導入するツールの選定方法や毎日の運用で必要なことなど具体的な手法についても時間の許す限り共有します。
2019年度より国立天文台では積層造形機、いわゆる金属3Dプリンタを導入しました。これまで電波望遠鏡用の部品をはじめ、天文台にて挑戦してきた事例について紹介します。